弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年1月11日

ウーマンアローン

著者:廣川まさき、出版社:集英社
 31歳の独身女性。カナダのユーコン川を小さなカヌーに乗って、たった1人で漕いで下る旅に出た。出発前に、荷物を盗まれ、ひどい風邪をひき、車は故障する。すでに波瀾万丈。でも、彼女はガン(鉄砲)も持たず、グリズリー(熊)が出没するユーコン川をひとり漕ぎはじめる。生理が始まった。辛そう・・・。でも、彼女はめげず、くじけず、ユーコン川をギターを抱えて漕いでいく。めざすは新田次郎の『アラスカ物語』に出てくるフランク安田がエスキモーの人々とともに住んでいた村だ。途中、元気なおばさん5人組と合流したりもする。この本では、男はまったく影が薄い。地球を半分支えているのは女性だなんて、まったくの嘘っぱちだ。女性で全地球を支えているというのが、よく分かる。夜、まっ暗ななか、1人でカヌーやテントのなかで眠るなんて、軟弱な私にはとてもできない。彼女はこう書いている。
 私は、ピンと張った昆虫のように、常にアンテナを張った。眠っている時でさえ、テントの外の音に耳を傾けつつ眠っていた。荒野で本当に必要なのはテクノロジーではなく、第六感(シックスセンス)であるように思った。私は、天候や川の表情、野生動物、すべてのことに意識を配り、緊張感を忘れなかった。その緊張感が、なんともいえない快感だった。緊張の糸がピンと張りすぎて、気疲れすることもあったが、そのうち、緊張とリラックスのバランスというものも理解できるようになった。
 凄い。凄すぎて、とても私には真似する勇気はない。写真でみると、いかにもフツーの日本女性だ。芯の強さが表情からにじみ出ている。第2回、開高健ノンフィクション賞を受賞した本。

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