弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年10月 1日

日本の信徒の神学

著者:隅谷三喜男、出版社:日本キリスト教団出版局
 日本のキリスト教徒は人口の1%もいません。プロテスタントが63万人、カトリックが46万人で合計109万人です。韓国では戦後みるみるうちに増えて、今では1300万人、4000万人の人口の3分の1がキリスト教徒です。儒教の国のはずなのに、どうしてこんなにキリスト教徒が急増したのでしょうか。中国でもプロテスタントが1000万人以上はいると推定されています。なぜ、日本だけが、こんなに増えないのか、著者はそれを問題としています。
 日本ではキリスト教徒は農村部にはほとんどいなくて、都市部の知識層を基盤としています。しかも、男は信者になっても「卒業」していき、女性が残るという構造です。
 若いキリスト教信者が減ってしまい、大学生の信者がいない教会がたくさんあるそうです。むしろ、60歳とか70歳の信者が増えています。男性35%、女性65%。したがって、日本の教会は女性役員の比重が高いという特徴があります。
 日本人のお葬式のときの焼香について、カトリック教会は、あれは民衆的慣習だからやってよいという公式見解を出しているので、カトリック教徒は平然と焼香している。しかし、プロテスタントは公然と認めてはいないので、信者はもじもじと焼香するしかない。そんな違いがあるそうです。そうなのか・・・。私は驚いてしまいました。無神論者を自認する私は、故人に対する畏敬の念を表明するための儀式として、何もためらうことなく焼香しています。カトリック信者みたいなものでしょう。
 ところで、日本でも戦国時代にキリスト教が入ってきたときには、わずか50年間のうちに50万人もの日本人が入信した実績があります。当時の日本人の人口は2500万人とみられていますので、50年間でたちまち人口の2%が入信したわけです。しかも、信念をもった確固としたキリスト教信者が大勢いましたので、殉教者が輩出し、天草の乱が起き、隠れキリシタンが明治まで続いていたのでした。そんな実績があるのに、なぜ、今の日本でキリスト教が普遍化しないのか・・・。日本人の現世利益、幸福主義が原因だと著者は解説していますが、実は、もうひとつ納得できませんでした。
 日本人の思想生活が2階建てという指摘はなるほどと思いました。つまり、外国の思想は2階にあり1階には日本の思想がある。2階は聖書を読んだりする信仰の生活で、毎日の生活は1階にあるというわけです。日本人は今も昔も変わらないということでしょうか・・・。

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