弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年9月 1日

シンポジウム・イラク戦争

著者:冨澤暉、出版社:かや軍事叢書
 今回のアメリカによるイラク侵略戦争を軍事科学からどう統括するか、という自衛隊の元幹部によるシンポジウムをまとめた本です。
 同台経済懇話会というのがあることをつい先ごろ知りましたが、この本によると、陸軍士官学校と幼年学校の出身で、戦後、官庁・企業・団体・法曹界で活躍している有志の団体です。1975年に発足し、上場企業の役員を主として、会員1000人。現在は防衛大学校出身者も会員としています。
 軍事革命(RMA)とは何かというのが主要なテーマとなっています。今回のイラク戦争は、「全縦深目標直撃無停止攻撃」と定義できる。イラク戦争の真っ最中にも、ペルシャ湾には、日本のタンカーが1日あたり40隻も行き来していた。いくらRMAが発達しても、しょせん最後の戦勝を決めるのは、死の危険をいとわない任務に邁進する使命感をもった兵士だ。これに勝る近代兵器はない。
 私は自衛隊の幹部(いわゆる制服組)が日本の政治の表舞台に登場しつつあると認識していますが、これこそ軍国主義復活だと恐れます。しょせん軍人とは、人殺しの技術を身につけた技術屋集団でしかありません。軍隊に権力をもたせていいことは何ひとつ考えられません。そもそも、いかに効率よく多数の人を殺せるかという議論を何の心の痛みもなくできるという人を、果たして人間と言えるのでしょうか・・・。

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