弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年12月10日

グレタ、たったひとりのストライキ

スウェーデン


(霧山昴)
著者 マレーナ&ベアタ・エルンマンほか 、 出版  海と月社

今や全世界から注目されているスウェーデンの高校生、グレタさんの両親がグレタさん本人と妹と一緒に書きあげた本だと紹介されています。とても読みごたえがあります。
それにしても恥ずかしいのは安倍首相です。国連でスピーチを申し入れて、断られたそうです。きれいごとのスピーチではなく、具体的に日本が何をどうするかという話をしないのだったら意味がないという理由で断られたのでした。小泉環境大臣が、同じように国連で、「セクシーだ」とか、訳も分からず意味不明のことを言ってのけたのと同じです。今の安倍政権は言葉の遊びをするのは長(た)けています。中身はまったくないのですが・・・。
グレタさんの母親はプロのオペラ歌手で、父親は演劇役者。グレタさんがアスペルガー症候群だと分かってから、仕事を辞めたそうです。なにしろグレタさんは、朝食のバナナ3分の1を食べるのに1時間近くもかかるのです。親は辛抱強く見守るしかありません。
グレタさんは聡明で、映像記憶ができます。世界中の首都の名前をスラスラ言えます。スリランカの首都の名前を言い、そのつづりを逆さに読むこともできます。頭の中で、単語の終わりから読めるのです。いやはや、とても信じられません・・・。
妹のベアタさんも、ADHD女児です。姉妹は、二人とも思春期の始まりにあたる10歳から11歳にかけて、爆弾のスイッチが入って点で共通している。
グレタさんは主張します。危機の原因をつくったのは全員の人々ではなく、ごく一部の人たち。だから、地球を救うためには、彼らの会社、彼らのお金を相手にたたかって、責任をとらせなくてはいけない。私も、まったく同感です。みんなが悪いというと、本質的に問題をつくり出している人の責任を軽減し、見えにくくします。その結果、問題解決が先送りされてしまうのです。グレタさんは、それがガマンできません。
飛行機に乗るという行為は、個人が環境に支える影響のなかでも最悪中の最悪の出来事だ。なので、グレタさんはアメリカへ行くときも帰りも船に乗っていたのでした。私は、申し訳ありませんが、月に1回は飛行機に乗っています。
世界でもっとも裕福な10%の人が全温室効果ガスの半分を排出している。
グレタさんは、2018年8月20日(月)にたったひとりでストライキを始めた。翌日は、グレタさんは一人ではなく、1人ふえ、2人ふえ、さらに大学生まで加わった。そして、テレビのニュースになり、ネット社会で学校ストライキの様子が拡散していった。
グレタさんのインスタグラムのフォロワーは一気に1万人になった。
グレタさんは訴えます。
気候危機は世界中の問題。パリ協定の目標を達成できる可能性は5%だと言われている。地球温暖化を2度未満におさえなければ、私たちは悪夢のシナリオに直面してしまう。
いま私たちは、毎日、1億バレルの石油をつかっている。今のルールに従っていると、世界を救えないことになる。私たちは、今6度目の大量絶滅の真っただ中にいて、通常の1万倍もの速さで、日々、200もの種が絶滅している。私たちの家は焼け落ちつつある。
私は、基本的に自分が必要だと思うときにしか話をしない。今が、その必要なときだ。
私のような自閉症スペクトラムに属する者にとって、ほとんどすべてのことは白か黒かだ。ウソをつくのが上手ではないし、みんなが大好きなソーシャルゲームに参加することもあまり興味がない。多くの点で、自閉症児のほうがノーマルで、その他の人たちのほうがかなり変だと思っている。
グレタさんの言うとおりですね。危機が目前に迫っているのに、そこから目をそらして安免にふけった生活することは許されないのです。ユーチューブで彼女のスピーチを字幕つきで見ました。素晴らしい。堂々として落ち着いた話しぶりで、深い感銘を受けました。
(2019年12月刊。1600円+税)

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