弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年10月29日

憲法九条は世界遺産

社会


(霧山昴)
著者 古賀 誠 、 出版  かもがわ出版

自民党の元幹事長であり、今なお自民党に対して影響力を有している政治家が安倍首相の9条改憲を鋭く批判した本です。
そこで語られているのは、しごくもっともなことばかりなので、平和を願う保守本流の人々にも受け入れられる本だと思いました。
100頁もない、冊子のような薄い本ですが、内容はとても濃いものがあります。そして、さし絵がとても良くできていて、すんなり本文を読みすすめるのを助けてくれます。
国家と国民に対する政治の責任として、一番大切な要諦(ようてい)は平和だ。平和でなければスポーツも、経済も、観光もない。日本の国が平和だから外国人が安心して足を運んでくれる。
第二次世界大戦に対する反省と平和への決意をこめて憲法九条はつくられている。
日本の国は戦争を放棄する、再び戦争しないと世界の国々へ平和を発信している。これこそ世界遺産だ。
戦後74年、わが国は一度として、他国と戦火をまじえたことがない。平和の国として不戦を貫くことができている。これは憲法九条の力であり、だからこそ憲法九条は世界遺産なのだ。これは、どんなことがあっても次の世代につないでいかねばならない。我々の世代だけのものであってはいけない。
あの戦争で多くの人が無念の思いで命をなくし、また戦争遺族の血と汗と涙が流された。その血と汗と涙が憲法九条には込められている。
日本がアジアの国に対して与えた損害は、今でも影響が残っている。
過去の過ちへの反省は、あの平和憲法のなかにもふくまれていて、だからこそ九条を維持し続けるという誠実さと謙虚さが、この日本の国には必要なのだ。
憲法九条については、一切改正してはダメだ。一字一句変えないというのが政治家としての信念であり、理念であり、私の哲学だ。
自衛隊のことを憲法に書く必要はない。
理想を実現するためにこそ政治はある。日本は、よその国と同じような道を歩く必要はない。
79歳になった著者が戦争で亡くなった父親をしのびつつ、戦後、行商しながら著者を育ててくれた母に感謝しながら憲法九条の大切な意義を切々と語った冊子です。多くの「保守」支持者に読んでほしいものだと思いました。
(2019年9月刊。1000円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー