弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年10月26日

三体

中国


(霧山昴)
著者 劉 慈欣 、 出版  早川書房

中国発のSF小説です。さすがにスケールが壮大です。
この「三体」3部作は、中国では2100万部も売れたというのですから、これまたスケールが日本とはまるで違います。
物語の始まりは1967年です。私にとっては東京で大学生としてスタートした記念すべき年でもあります。まだ大学内は嵐の前の静けさでした。ところが、隣の中国では文化大革命が深く静かに(実は、にぎにぎしく。静かだったのは報道管制下にあったことによる)進行中だったのでした。
文化大革命の本質は、実権を喪いつつあった毛沢東が権力奪還を企図して始めた武力を伴う権力闘争だった。ところが、表面上は文化革命というポーズをとっていたのでした。そこは毛沢東の巧みなところだ。そのため、この毛沢東が始めた文化大革命に全世界の文化人の一部が幻想を抱いて、吸い込まれていった。
武力をともなう残酷な権力闘争(文化大革命)の過程で、物理学教授である著者の父親は若い紅衛兵によって死に至らしめられた。
周の文王が突然登場したり、紂王(ちゅうおう)も出現したり、時代背景は行きつ戻りつします。そして、地球外知的生命体を探査するプロジェクトも関わってくるのでした。
やがて、秦の始皇帝まで姿をあらわします。いったい、この話はどんな結末を迎えるのだろうか...と心配にもなってきます。
三体時間にして8万5千時間、地球時間で8,6年後、元首が三体惑星全土のすべての執政官を集める緊急会議を招集した・・・。
ともかく、スケールの大きさが半端ではありません。縦にも横にも限りなく広がっていくのです。不思議な感覚に陥って、それを楽しむことができる本でした。
私はひたすら、すごいすごい、とてつもない発想だと驚嘆しながら読み通しました。
(2019年7月刊。1900円+税)

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