弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年9月 1日

物流危機は終わらない

社会


(霧山昴)
著者 首藤 若菜 、 出版  岩波新書

日本のトラック業界には、200万人が働いている。
私も宅急便には大変お世話になっています。東京への出張は日帰りせず、必ず一泊出張とし、最低でも6冊は読み上げることにしています。そして、行きはなるべくかさばる本を読み、読み終わったら宅急便で自宅へ送ります。1回1500円もかかりませんので、私にとっては安くて便利なものです。東京の弁護士会館の地下にある本屋で、読むべき本、必要な本を仕入れますが、これはいくら重くても持ち帰るしかありません。ともかく、便利な宅急便は私にとって必須不可欠で、いかに地球環境を破壊していると言われても、やめられないのです。
佐川急便は、2013年にアマゾンジャパンの運送をとりやめた。
ヤマト運輸は、2006年から2016年の10年間で、取扱個数が1.54倍、6億700万個も増えた。そして、いま日本を流れる宅配便の半数を握っていて、「ヤマト一人勝ち」の状況にある。
トラック運転手には、労働時間の短縮より、収入の増加を求める声が少なくない。
「ドライバーズ・ダイレクト」は、ドライバーの労働条件を悪化させる要因の一つ。
ヤマト運輸は、グループ全体で20万人の従業員をかかえる巨大企業だ。
ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社でシェアの9割以上を占める。
高速道路料金は、荷主から支払われない。
深夜の運転は睡魔とのたたかい。ドライバーたちは、常に時間に追われている。
パレットを使うと、積載効率が下がる。
長距離ドライバーの労働現場では、連続運転時間も、拘束時間も、休息時間も、国の基準がことごとく守られていないという現実がある、ドライバーは、1週間で10時間、1ヶ月で40時間、年間で460時間も長く働いている。つまり、1週間あたり、平均より1日も多く働いている。
トラック業界は、一手に非効率を引き受けてきた。現代社会は、無駄に車両を走らせる物流を基礎として、便利で効率的な仕事や暮らしを獲得していった。
日本郵便は本業(中核)である郵便事業について、赤字が続いている。
働く人々の高学歴化は、ドライバーのなり手不足に拍車をかけた。
かつては、トラック運転手は、「きついけど、稼げる」仕事だった。ところが、今ではきついうえに、稼げない仕事になってしまっています。
ネット通販が急激に拡大するなかで日本の物流が危機的状況にあることがひしひしと伝わってくる新書でした。
(2018年12月刊。820円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー