弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年5月17日

「自由都市」の灯をかかげて半世紀

司法

(霧山昴)
著者 堺総合法律事務所 、 出版  左同

堺総合法律事務所が50周年を迎え、記念誌を発刊しました。同事務所が堺・泉州の地に誕生したのは1969年春のことです。このとき、私はまだ大学3年生でした。
所員の一人が、NHKの「プロフェッショナル」に主人公として登場した(2009年)村田浩治弁護士です。労働弁護士としての活動がNHKの特集番組となって光があてられたのは画期的です。そして、自由法曹団の本部事務局次長として、井上耕史弁護士、次いで辰巳創史弁護士が活躍しました。どちらも、クレジット・サラ金、商工ローン問題でも大活躍しています。
さらにこの人こそ堺総合というべきなのが、平山正和弁護士です。NHKの再現ドラマ「逆転人生・奇跡の逆転無罪判決」にも登場しています。コンビニ強盗事件の犯人として逮捕されたミュージシャンの青年の無罪を母親の執念の努力とともに勝ちとったのです。
以下、平山弁護士のエッセーを紹介します。平山正和弁護士のエッセーは出色です。そのタイトルは「70代は黄金期?洟垂れ小僧?」です。泉州の地・堺で弁護士生活50年を迎え、「今も青年弁護士当時とほとんど変わることなく(と自分で考えている)」現役で、弁護士活動を元気に続けています。
「意欲と気力、体力が続く限り引退という言葉はありません。私ながら職業として弁護士を選んだこと、働く人々とともに活動する弁護士を選択したことを、おおいに得したと実感し」ているのです。問題は、では、どうやって、平山弁護士はそれを可能にしたのか、です。
実は、平山弁護士は42歳の厄年に油断大敵、原因不明のままインシュリンがまったく出なくなるというⅠ型糖尿病を発症して今日に至っているのです。ですから、インシュリン注射は欠かせません。そして、食事療法のおかげで「30年たっても合併症がないとはおかしい」と主治医が頭をひねって不思議がるのです。
たとえば、お昼は野菜たっぷりの塩分なしの健康(愛妻)弁当を30年以上も続けています。決まった時間に、どこでも食べる。たまには移動のタクシーのなかで食べて、運転手から驚かれます。
野菜・海藻・キノコはカロリーがないので、いくら食べてもよく、大量に食べるので、糖尿病の食事療法をするとお腹が空くというのはまったくの誤りだと平山弁護士はキッパリ断言します。おかげで70歳をこえた平山弁護士の頭髪は黒々、ふさふさ、額もはげあがっていません。
70歳になった私は、濃さと硬さが自慢だった頭髪が薄く、弱々しくなってしまい、今せっせと1日2回、養毛剤をすりこんで回復しようと、はかないあがきをしています。
それでは、平山弁護士の一日の生活をみてみましょう。1日8時間の睡眠を確保。アイフォンのクラシック音楽で目覚めます。朝食は30分かけて自分でつくります。自分で鋭く研いだ包丁で、玉ねぎ、ニンジン、ショウガ、ピーマンをみじん切りにして水にさらして辛味を逃がし、リンゴ、かまぼこ、チーズを刻んで入れ、ヨーグルトをかけて味つけし、大きなお椀一杯のサラダをつくります。調味料もドレッシングも不要。ご飯は茶碗半分ほどに納豆、黒ニンニク、とろろ昆布、ジャコをかけて、30分かけて食べるのです。
朝食後はストレッチ。開脚ベターに挑戦します。これに30分かけます。こんな「朝活」の1時間のあと、事務所では、毎日、夜8時まで疲れを知らないで一日を過ごします。
外に出て歩くときは、意識してフルスピードで大股で歩きます。電車に乗ったら、空いていても座らず、立ったまま、つま先立ち。テニスのステップを踏みながら本を読みます。
平山弁護士は42歳のとき、堺市長選に立候補して、市長になりそこねました。
そして読書量は、わずか年100冊でしかなく、その少なさに平山弁護士は愕然としています。私は、この30年以上、年に500冊を下まわったことはありません。そこだけが、平山弁護士に勝っているところです。
他人様の生活と権利、財産を守るために、そして権力に立ち向かう活動に全精力を傾けてたたかうわけですから、弁護士の活動は脳を活性化し、身体も動かして「健康寿命」の伸長におおいに効果がある。社会的弱者の用心棒、また牧師か坊さんの人生相談のような弁護士活動なので、「健康寿命」が続くかぎり弁護士の「現役活動寿命」も続く。平山弁護士は、こう考えています。
私も、平山弁護士のあとに続くよう、無理なくがんばります。
(2019年5月刊。非売品)

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