弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年4月18日

日米安保体制史

社会

(霧山昴)
著者 吉次 公介 、 出版  岩波新書

辺野古の埋立を安倍政権が今なお強引にすすめていることに怒りと大いなる疑問を感じています。いったい、主権者たる日本国民(この場合は、直接の当事者である沖縄県民)の明確な意思に反して行政がすすめられてよいものでしょうか・・・。
県民投票で7割の埋立反対の意思表示を踏みにじっていいという根拠は何なのでしょうか。それほど、日本はアメリカに奉仕しなければいけないことになっているのですか。アメリカは日本を守るつもりなんてないと本人(アメリカ政府当局)が何度も明言しているのに、漠然とイザとなったらアメリカは日本を守ってくれるはずだという幻想に多くの日本人が今なおしがみついているようにしか見えないのはどうしたことでしょう・・・。
日米安保条約があるから日本の平和は守られているなんて、単なる幻想でしかないと私は考えています。この本は、日米安保条約とそれにもとづく安保体制の変遷を明らかにしています。
かつて沖縄には1000発以上の核兵器が配置されていた。1950年代に、アメリカ軍にとって沖縄は海兵隊と核兵器の拠点だった。
アメリカによるベトナム侵略戦争のときには、B52戦略爆撃機が嘉手納基地から直接ベトナムへ出撃していった。毎月350回も出撃した。
ところが、その後、アメリカの核戦略が変わり、地上配備型核兵器から、潜水艦搭載型核兵器へ重心が移り、沖縄から核兵器を撤去した。しかし、いったん有事の際には核兵器を自由に持ち込めるように佐藤首相とニクソン大統領は「沖縄核密約」をかわした。にもかかわらず、佐藤首相は表向きは核抜き返還をアメリカから勝ちとったなどと宣伝し、ノーベル平和賞まで受賞するに至った。日本の首相は今のアベと同じく昔からとんでもない大嘘つきだったのです。
日本に駐留しているアメリカ軍は日本政府から至れり尽くせりの厚遇を受けている。高速道路だって無料ですよね。その典型が悪名高い「思いやり予算」です。当初は、一時的なものだと説明され、年に62億円でした。しかし、恒常的なものとなり、今では年間5000億円ものアメリカ軍駐留経費を負担しています。
日本って、本当にお金持ち国家なんですね。これだけのお金を大学生や司法修習生の奨学金にまわしたら、日本の将来も前途洋々たるものになると思いますよ・・・。
いま、アベ首相はアメリカに追従するだけで、韓国や中国とますます冷たい関係にあります。北朝鮮ともろくに話し合いもしていないため、拉致問題の関係も遠のくばかりです。
著者は、アメリカ軍の権益と日本の対米協力の拡大を追求するだけの安保体制のあり方は考え直す必要があると提言しています。まったく同感です。
辺野古の埋立をどんなに強引にしたって普天間基地がなくなることなんてない、このことを私たちはきちんと認識すべきです。そして、そろそろ安保条約そのものをなくすべきではないでしょうか・・・。
(2018年10月刊。860円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー