弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年4月 1日

狼の群れは、なぜ真剣に遊ぶのか

オオカミ

(霧山昴)
著者 エリ・H・ラディンガー 、 出版  築地書館

圧倒的な面白さです。オオカミたちの顔は輝き、畏敬の念を思わず抱いてしまいます。タイトルどおり、本当に真剣に遊んでいる様子もうかがえます。オオカミの研究がすすんでいることを、この本を読んで実感しました。
著者はオオカミとの接触が20年以上、オオカミとの出会いは1万回以上も体験した元弁護士です。弁護士として、犯罪事件、賃貸トラブル、離婚といった問題に次第にストレスがたまり、熱意をもって公正な勝利に導く代わりに、裁判が苦痛でしかなくなった。優れた弁護士が必要とする距離と非情さに欠けていた。ふむふむ、弁護士稼業も辛いのですよね・・・。
自然のなかで生きるオオカミの寿命は9年から11年ほど。囲い地オオカミだと15年ほど。
オオカミを身近に観察できる人は、静かで控え目な人だ。
人間と同じように、オオカミでも、本当に重大な問題は、最高位の女(メス)が決める。オオカミの家族にとって重要なことは、すべて最終的には彼女の必要性に適応させる。
アルファオオカミだけが交尾を許されているというのは誤った理解だ。これが訂正されるまで20年を要した。オオカミの4分の1は、ほかのパートナーと交尾し、その結果として、一家族内の多数の雌(メス)オオカミが赤ちゃんを産み、その一部は、家族みんなで育てる。
リーダー夫婦はたいてい生涯を通してともに暮らし、リーダーが死ねば、次に経験の豊富な雄がそれに代わる。リーダーの地位をめぐって家族内で真剣な争いが起きることは野生オオカミでは、ほとんどない。
リーダーのお気に入りは、子どもたちとじゃれあい、格闘すること。負けたふりをするのが一番の楽しみだ。これもオオカミの知性のあらわれ。
オオカミの狩りの80%は失敗に終わる。オオカミは純粋な肉食ではなく、死肉、魚、野菜や果物も食べる。最良のハンターは2歳から3歳。
獲物を倒すのは雄のほうに利があるが、雌は動きが敏捷で、狩り立てを得意とする。
オオカミの子どもたちは、遊びながら公正さや協力を学び、していいことと悪いことを区別するようになる。遊びの重要な特徴はセルフコントロールにある。
大人のオオカミも、追いかけっこ、引っ張りあい、かくれんぼといった遊びをする。
遊びは学習とトレーニングの時間であり、相手をよりよく評価するための経験を全員が積む。そのなかで、自分がしてほしくないことは、ほかのものにしないことを学ぶ。
オオカミの家族関係を知ると、人間はオオカミからも学ぶべきことがたくさんあると思いました。
(2019年2月刊。2500円+税)

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