弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年1月22日

安倍官邸vs.NHK

社会

(霧山昴)
著者 相澤 冬樹 、 出版  文芸春秋

森友事件をスクープしたNHKの記者が、なぜNHKを辞めたのか、その事情が本人の口から語られています。NHKは、著者に対して「事実無根」だとか、反撃しようとしているようです。言論の自由を拡大する方向での食い違い(論争)であってほしいものです。
著者はラ・サール高から東大に入り、法学部を卒業してNHKに入って31年間の記者生活を送っています。森友事件と出会ったのは、大阪司法担当キャップになったことから。
森友学園の土地払下げ問題の核心は、開設される新しい小学校の名誉校長に安倍昭恵総理夫人が就任していること。要するに、安倍首相が公私ともに国有地の不当払い下げに直接かどうかを問わず関わっている疑いはきわめて濃厚なのです。
したがって、安倍首相は国会で再三明言したとおり首相を辞めるだけでなく、国会議員も辞めなければいけません。それなのに今日なお、首地の地位に恋々としがみついているのです。醜状をさらすもほどがあります。こんな首相をトップに据えておいて、子どもたちに道徳教育の押し付けを強化しようとしているのですから、開いた口がふさがりません。
著者は安倍首相夫人とのかかわりを記事の冒頭においた原稿をつくった。しかし、デスクが削ってしまった。あたりさわりのない原稿にデスクは書き換えたのです。
NHKの小池報道局長は、安倍首相と近く、安倍政権に不都合なネタを歓迎するはずがない。部下は、当然のように上司たちの意向を機敏に察知する。
忖度(そんたく)しない記事を電波にのせたとき、NHKの上層部から言われる言葉は次のようなもの。
「あなたの将来はないと思え」
いやあ、これって恐ろしい言葉ですよね・・・。
なぜ、国有地が格安で販売されたのか。国と大阪府は、なぜ無理に認可してまで、この小学校をつくろうとしたのか。
森友事件とは、実は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件だ。責任があるのは、国と大阪府なのだ。この謎を解明しないと、森友事件は終わったことにはならない。
NHKが報道機関としていったいどうなっているのか、その内実を知りたい人には超おすすめの本です。
(2018年12月刊。1500円+税)

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