弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年1月21日

人体は、こうしてつくられる

人間


(霧山昴)
著者 ジェイミー・A・ディヴィス 、 出版  紀伊國屋書店

もっとも身近な驚異の世界、ワンダーランド、それは私たちの人体です。
人間は体内で病気を治す薬まで合成しているのですから、本当に不思議な存在です。
生物が自らを構築するとき、発生に必要な情報は胚(はい)のなかにあり、それを胚自身が読みとって自らをつくりあげていく。外部の図面にもとづくものではなく、外からの指示によるものでもない。
生物構造の場合は、構築にかかわる全要素が責任を共有する。DNAは、いわゆる設計図ではない。そこには詳細な設計図はなく、現場監督もいない。ましてや既存の機械や工具を使えるわけでもない。
生物の材料は三つ。タンパク質、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNAの三つだ。
成人の細胞は、数十兆の単位で(37兆個か・・・)、これは銀河系の星の数の10倍以上だ。
細胞には厳密に定められた形がない。ほとんどの細胞は、周囲の環境に応じて形が決まる。ヒトの典型的な体細胞は直径が0.01ミリ。
当初の細胞は、どれも同じ能力をもっていて、人体のどの部分にでもなりうる。たとえば頭部となると決められた細胞が初めからあるわけではないし、指令塔のような細胞が最初からあるわけでもない。
細胞はとても小さいが、細胞内の反応を担うタンパク質はもっと小さく、10万分の1ミリメートルほど。そのタンパク質が溶け込んでいる液体の水分子は、さらに小さい。
胚は、最初の血液細胞を大動脈の壁だった細胞からつくる。これは血管のなかにいる細胞なので、どうやって血管のなかに血液細胞を入れるのかという「難問」は考える必要がない。
人が学習するとは、脳のニューロン同士がシグナルのやりとりを介して結合を変えること。大脳には、数百億のニューロンがあり、成人では一つのニューロンが1000ほどのシナプスをもつので(子ども時代はもっと多い)、大脳全体のシナプスはまさに無数にあると言える。
健康な腸には、組織1グラムあたり10億から100億の微生物がいる。
腸内細菌は、酵素を分泌して、消化や代謝を助けてくれる。
腸内細菌は、毒素あるいは発癌物資になりうる食物分子を細菌酵素によって攻撃してくれるので、食物を安全なものにする役割も果たしている。
人体に有益な菌が豊富な環境として女性の膣もあげられる。
共生細菌は、ヒト細胞とシグナル伝達による会話をする。
腸の共生細菌は、シグナルを出すことで、自らの生存を確保する。
ヒトと腸内寄生虫は、長いあいだ、ともに進化してきた関係にある。
ぜん息は、免疫系のバランスが崩れ、ほこり、動物の毛、花粉といった無害な物質に過剰に反応してしまうのが原因だ。
目のレンズ機能の3分の2は角膜が担っていて、「目のレンズ」と呼ばれる水晶体は3分の1でしかない。
どの動物も、メンテナンス重視で長生きするか、それとも精力的に短く生きるかという選択肢のあいだでバランスをとっている。たとえば、マウスは捕食されるリスクが非常に高いので、短期間で繁殖することに注力する。
ヒトの活力と長寿への投資配分は、祖先がアフリカの平原でさらされていた捕食リスクによって決まったもの。ヒトが生まれながらにもつメンテナンスシステムは、100歳をこえる人はごく一部という仕様だ。
人体の不思議な仕組みの一端を知ることのできる興味深い本です。
(2018年11月刊。2500円+税)

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