弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年9月13日

刑務所には時計がない

司法

(霧山昴)
著者 玉城 英彦、藤谷 和廣ほか 、 出版  人間と歴史社

北海道の大学生が札幌刑務所などを視察した感想文をもとにした本です。なるほど、世間には刑務所って、とんでもなく誤解されているよね・・・、そう思いました。
まずは刑務所をめぐる基本データを紹介します。
2016年12月末における日本全国の受刑者は4万9千人(男4万5千人、女4千人)。女性は、8・4%で、年々増加する傾向にある。
男女あわせて罪名をみると、窃盗(その多くは万引)が33・4%、次いで覚せい剤の27・3%。この2つで6割をこえる。窃盗(万引)は、女性の高齢者に多い。
この25年間に、受刑者の高齢化率は男性で1・7%(1990年)から16・5%(2015年)へと10倍も伸びている。女性も、3・9%から33・1%へと、ほぼ8・5倍になっている。女子受刑者の3人に1人は65歳以上。
刑務所への再入所率は2004年からずっと上昇しており、2015年は59・4%(男の61%、女の46%)だった。刑務所を出るときには、今度こそ「もうしないぞ」と思ったのに、実際には10年後内の再入所率は、総数で47・6%、満期釈放で60%、仮釈放では36・8%になる。再入者は、男女ともに無職者が72%、住居不定者が23%だった。
私は刑務所から満期出所してきた高齢者(60歳以上)が駅構内の立ち喰いウドン店で無銭飲食したというケースの弁護人になり、大いに矛盾を感じました。家族が協力してくれないため、借家を探すための保証人が得られなくアパートを借りられなかったのです。
初めて実際の刑務所のなかに足を踏み入れた大学生たちは、刑務所内がいたって静かで清潔であること、テレビを見るなどの「自由」があること、タダで医療を受けられることに驚いていました。一般社会には生活保護基準よりも低いレベルの生活を余儀なくされている人々が大勢いるのに、刑務所内にいる受刑者のほうが「自由」を満喫しているように見えたのでした。
日本人の再犯率の高さに刑務所の居心地の良さがあげらるのではないのか。それは、おかしいだろ。そんな率直な学生の声(感想)が初めに紹介されています。
イタリアの刑務所には、所定の工場で働くために通勤している受刑者がいる(10%)。所外での就労を認めると同時に所内での学習もすすめた。受刑者の大半がやがて実社会に出てくるわけですから、所外就労の機会を保障するのは大変いいことだと私は思います。おかげで、この刑務所の再犯率は18%でしかないとのこと。立派です。
日本でも、地域社会と受刑者とがもっと交流できるようにしたらいいと私は考えます。
刑務所の副食費は1日1人あたり430円。これでも、数が多いと、けっこう美味しい食事が食べられます。
刑務所の誤ったイメージを払拭するのに、とてもいい本だと思いました。
(2018年5月刊。2200円+税)

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