弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年9月12日

EVと自動運転

社会

(霧山昴)
著者 鶴原 吉郎 、 出版  岩波新書

私は車に毎日のっていますが、実は車の運転は好きではありません。断然、電車を好みます。車中では本が読めないからです。仕方がないので、車中では、ずっとNHKフランス語のCDを聴いています。聴き流しのほうが多いのですが、それでも耳は慣れます。
自動車事故による死者はピーク時(1970年)の年間1万千人が、今では4千人弱(2017年)に減った。しかし、全世界では125万人もの死者が出ている(2013年)。
そして、そのなかで65歳以上(私も立派に該当します)が50%を超えている。
この交通事故の原因の9割は人間のミス(認知ミス・判断ミス・操作ミス)によるもの。
実は、最近、私は裁判所構内で愛車(レクサス)を駐車しようとしたところ、なぜか暴走して庁舎壁にぶち当ててしまい、6万円余りの補償金を支払わされました。レクサス側は私の操作ミスとして片付けようとしていますが、本人はレクサスの構造(メカニズム)に何らかの欠陥があるのではないかと疑っています。庁舎への衝突事故から3ヶ月たつのに、レクサス側は一向に事故原因をきちんと明らかにしません。『空飛ぶタイヤ』を、ついつい思い出してしまいます。
デフレ社会と言われる日本にあって、自動車の価格は一貫して上昇し続けている。「カローラ」119万円が187万円と、30年間に57%も値上がりしている。
日本国内の新車販売台数は、ゆるやかに減少している。1990年に780万台、2005年までは600万台弱で安定していたが、2009年に470万台に急落し、その後は500万台前後で推移している。
日本では軽自動車が4割前後を占めている。そして、ハイブリッド車(HEV)が日本では販売台数の4分の1以上を占めている。これは世界的に珍しいこと。
日本では自動車産業は成熟産業だが、世界全体では、これから1億台をこえる見込みであり、まだまだ成長産業である。
世界で販売されているクルマの3分の1は、日本メーカー製か日本メーカーの合弁企業製が占めている。アメリカで販売されているクルマの4割弱は日本メーカ-製。ところが、日本製クルマはヨーロッパでは存在感がない。
日本経済は、自動車への依存度を高めている。自動車産業の出荷額は主要製造業全体の2割にあたる52兆円。関連就業人口は1割、550万人にのぼる自動車産業の屋台骨になっている。
アメリカの自動運転車が注目されたのは、軍事作戦で戦死者が出るのを減らすためである。「2015年までに軍事用地上車両の3分の1を無人化する」ことをアメリカの国防総省(ペンタゴン)は目標としている。2007年には1位の車の平均時速は、時速23キロだった。
自動運転の車は、レーザー光線を使ったレーダーによる。周囲360度レーザー光線を照射し、物体にあたってはねかってくるまでの時間を測定することで、車両の周囲のどこに物体があるのか、その物体までの距離はどの程度かを把握する機能をもっている。物体の位置だけでなく、形状までを数センチという非常に高い誤差で正しく検知できる。
日本と世界の車について、その現状と展望をコンパクトに明らかにしている新書です。
(2018年3月刊。780円+税)

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