弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年7月17日

声のサイエンス

人間

(霧山昴)
著者 山﨑 広子 、 出版  NHK出版新書

男女で声が違うのは、なぜなのか・・・。このところ、ずっと疑問に思っていました。その答えは、要するに、男性は喉頭が前に突き出し、声帯が7ミリ長くなって1オクターブほど低い声になるということ。
声が低く太いのは、多くの生物の共通認識として、身体が大きいことを示す。
新生児(赤ちゃん)は、自分の母の声を間違いなく認識し、他の母親の声と聞き分けている。お腹のなかで聞いていた母の言葉、母国語に特徴的な発音に、生まれてすぐに反応する。
声という音は、話し手の実に多くの情報をふくんでいる。身体・体格・顔の骨格・性格・生育歴・体調から心理状態まで・・・。
声は、ひとりひとりの履歴書のようなもの。声を形成する要素の2割は、生まれもった体格・骨格や声帯の長さ、共鳴腔(口腔や鼻腔など)の形など、先天的な声の素質。残り8割は、生育環境や性格と、その時の心身の状態。したがって、声は履歴書というよりは、その時の体調や心情を実況放送しているようなもの。
人は、出したい音を、その周波数、つまり、その数だけ声帯を振動させて出している。 ド・レ・ミと歌うときには、1秒のあいだに、262回、293回、329回の振動数を出す張力に瞬間的に調整している。でも、この音は、まだ声ではない。声帯から出た音が声になるためには、「共鳴」が必要。話すためには、声帯から出た音を言葉に応じた発音にしなければならない。発音は声帯から上の部分でつくられる。
260ヘルツの音を出すために、意識的に声帯を1秒間に260回振動させることは出来ない。脳が、生まれてから今までの声と聴覚の神経の蓄積から瞬時に司令を出して声帯を振動させる、この司令にしたがって出した声を、聴覚が即座に分析して、脳は音の大きさや発音を判断し、次の音への司令を出す。声帯の張り加減、声道や口腔や舌や唇の形、呼気量など、数十万通りのなかから必要な組みあわせを瞬時に選んで、100以上もの筋肉を動かして調整する。これを聴覚フィードバックと呼ぶ。
 声を出して話すというのは、脳と聴覚と発生の驚異的な連携の賜物(たまもの)なのだ。
声帯は、声を出すことを目的とした器官ではなく、異物が肺に入らないようにするための門でしかない。
声を出すことは、身体の他の働きをしている機能を巧みに利用し、全身を共鳴させて出すもの。だから、声に身体の状態が出てしまうのはあたりまえのこと。
人は、話すときに聴覚で自分の声を確かめながら発生している。人は生まれたときから、環境音という膨大な音情報を「無意識に」取り込んで育つ。聴覚は、それらの音を吸収し続け、脳に集積して分析し、その結果として脳で自分の声が「つくられる」。
話すときに顔をほとんど動かさないと、音声が安定する。「まばたき」をすると声のピッチを下げて不安定にするので、話している途中でまばたきしないのは鉄則である。
人前で話すことの苦手意識と、自分への無能感は比例している。
緊張が高まって逃げ出したい気分になったら、軽く「コホン」とやってみる。そうすると、興奮していた身体の状態が瞬間的にリセットする仕掛けだ。
なるほど、そうだったのか・・・、説得力のある話の展開でした。
(2018年4月刊。820円+税)

フランス語検定試験(仏検一級)の結果が判明しました。もちろん不合格なのですが、51点(150点満点)でした。合格点は89点ですので、38点も加点しなければなりません。まだまだ道遠し、です。実は自己採点で57点でしたので、あわよくば60点(4割)まで届くかとひそかに期待していたのです。仏作文と書き取りが思ったより悪かったようです。
毎朝、NHKフランス語の応用編を書き取りして、丸暗記につとめています。今にみていろ、ぼくだって・・・。あすなろうの心境です。

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