弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年3月23日

史上最悪の英語改革

社会


(霧山昴)
著者 阿部 公彦 、 出版  ひつじ書房

 私も自慢じゃありませんが、英語は読めても話せません。その最大の原因は、話す機会がまったくなかったからです。フランス語のほうは毎週土曜日にネイティブのフランス人と会話しているので、たどたどしくても、一応の意思疎通はできています。やはり、勉強の量と実践の場の確保のおかげです。
 英語だけで英語を教えるというのは、この本の著者も強調していますが、あまりにムダが多すぎると思います。ルールを知らなくて、耳からだけで英語がまともに話せるようになるとは私にも思えません。店先で買物するくらいなら、これでいいでしょうが、ルール(文法)を知らなかったら、文章(英文)は書けないでしょう。それでは社会の求める能力を身につけることにはなりません。
受験産業だけが喜ぶような英語教育にしてはならないと著者は声を大にして叫んでいます。私も、まったく同感です。大学入試に業者テストを使うとか、スピーキング試験をするとか、とんでもないことです。
4技能とは、英語を読み、書き、話し、聞くという能力のこと。
いま文科省がすすめようとしているのは、本当の目的は一部業者のための経済効果にあるとしか思われない。そして、この政策のために、肝心の英語力は、今よりもっと低下する可能性がきわめて高い。
大学入試に業者試験が導入されようとしている。これは業者にとって間違いなく収入増につながる。そして、これは格差を助長する。というのは、業者試験はきわめてパターン化しているので、受験すればするほど点数があがる。ということは、お金を使えば使うほど、大学入試のために有利な点数がとれる。逆にいうと、家計に余裕がない家庭の受験生は競争から落ちこぼれていくことになる。
日本の英語教育は、1989年からコミュニケーション重視でやってきている。それでも英語が話せない人が多い。なぜか。日本人に欠けているのはスピーキングの能力だけなのか・・・。
TOEIC(トーイック)のテストは、企業が「使える労働者」を確保するための道具。「労働力」確保のためである。そこでは、単純労働で使われる英語が中心で、考えるための英語や、感情の特徴を伝えるための英語は入っていない。そこにはアメリカ流の雇用関係が反映されている。会社にとって従業員は道具であり、戦力であり、「使える」かどうかが肝心。TOEICは、それを測るもの。
フレーズを覚えるとしても、背後にあるルールを知っていたら、はるかに能率があがるし、その後の応用も可能になる。同じ時間をかけても、脳が処理できる量は飛躍的に増える。
私も、文法は大切だと思います。やみくもに単語を暗記するより、ルール(文法)にしたがって覚えていく方が応用もきいて英語力が深く広くなると思います。
文科省が、世間の誤解(錯覚)を利用して、テスト業者や予備校と組んで日本人の英語力を低下させ、英語嫌いを増やそうとしていることに腹立たしく思えてなりません。
158頁の価値あるブックレットです。ほんの少しだけ割高の感はありますが、いま大いに読まれてほしい本です。

(2018年2月刊。1300円+税)

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