弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年2月21日

海のホーチミン・ルート

ベトナム


(霧山昴)
著者  グエン・ゴック 、 出版  富士国際旅行社

 私にとってベトナムとは、青春時代のベトナム反戦運動そのものです。アメリカが遠くアジアのジャングルへ50万人もの兵士を送り込んで侵略戦争をすすめたあげく、みじめな姿で敗退していったことは今も記憶に強く残っています。
 国の独立を守るために多くの前途有望なベトナムの青年たちが志半ばに倒れてしまいました。同じことは、亡くなったアメリカ兵5万5千人についても言えることです。まったくの無駄死にです。この戦争でもうかったのはアメリカの軍事産業のみ。
 この本は、ベトナム戦争をたたかい抜くために必要不可欠だった山のなかのホーチミン・ルートのほかに海上輸送路もあったことを明らかにしています。漁船に偽装して、北から南へ武器・弾薬そして医薬品などを運んで、南でたたかう解放戦線の兵士に届けていたのでした。
 山のなかを通るホーチミン・ルートは、車道だけで2万キロ。燃料を運ぶパイプラインは全長1400キロ。アメリカ軍は、このホーチミン・ルートを壊滅すべく、空からB52をふくむ爆撃機で、400万トンの爆弾を投下した。これは、アメリカが第二次世界大戦でつかった全砲爆弾量とほとんど同量。大量の枯葉剤もまき散らした。しかし、ホーチミン・ルートは最後まで健在だった。
 そして、海のホーチミン・ルートも開放されていた。陸のホーチミン・ルートは3カ月から長いときには1年間かかった。しかし、海のルートを使うと、1週間から10日間で南部の目的地に到達できた。
 北部のトンキン湾を出て、公海上を南下し、南部の秘密の船着き場の所在地と同じ経度に達したら、一気に方角を西に変えて、ベトナムの領海に直進する。夜の闇のなかで荷物をおろし、船着き場の守備隊が荷物を秘密の武器庫に運び込む。そして、夜明け前にベトナム領海を脱して公海に入る。
 山のホーチミン・ルートは山のなかで隠れる場所が至るところにある。これに対して、海のルートは隠れる場所のない広大な海面である。しかも、陸上よりも圧倒的な力の差のある海軍と対決することになる。
 メコンデルタには、巨大な秘密の船着き場が網の目のようにつくり出されていた。
  この本は、南シナ海の風波を乗りこえて北から南の戦場へ命がけで武器・弾薬を運んでいた北ベトナムの125海軍旅団の戦士たちとそれを支えた家族や民衆に取材して出来あがっています。苛烈な戦争を生き抜いた人々が今も健在なのです。もちろん多くの人が犠牲になっています。
ベトナム戦争はアメリカの愚かさを全世界に証明しましたが、今また、トランプ大統領は力の政策をごりおしですすめていて、本当に怖いです。まったく歴史の教訓から学んでいません。それは、わが日本のアベ首相も同じことで、残念なのですが...。
(2017年9月刊。1500円+税)

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