弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年1月27日

トラクターの世界史

社会


(霧山昴)
著者 藤原辰史 、 出版  中公新書

トラクターと戦車は、二つの顔を持った一つの機械である。
トラクターとは何か・・・。トラクターとは、物を牽引する車である。もっと詳しく言うと、トラクターは、車輪が履帯のついた、内燃機関の力で物を牽引したり、別の農作業の動力源になったりする。乗車型、歩行型、または無人型の機械といえる。
アメリカのフォード社は、第一次世界大戦を4度戦ったイギリスの農村での労働者不足を補うべく、トラクターを輸出した。
トラクターの登場は、馬の糞尿を肥料に使う習慣を徐々になくし、化学肥料の増産と多投をもたらした。
ソ連は、国家主導でフォードのトラクターを導入し、フォードの大口の顧客となった。
ソ連の農業集団化政策は、アメリカのトラクターの量産体制の成立のただなかで遂行された。トラクターは共産主義のシンボルでもあった。
ソ連では、トラクター運転手の半分以上が女性だった。
レーニンは、アメリカの農業機械化に強い関心を抱いていたし、農民こそ革命の主体になりうると考えた。
第二次世界大戦が始まると、ほとんどのトラクター企業が戦車開発を担うようになった。
スターリングラードにはトラクター工場があったが、トラクターだけでなく、ソ連軍を代表する中戦車T-34の約半分を生産していた。
アメリカの歌手・エルヴィスプレスリーの趣味の一つは、トラクターに乗ることだった。
日本は、20世紀の前半はトラクター後進国だったが、後半には先進国へと変貌をとげた。農地面積あたりの台数も世界一位となった。
トラクターを取り巻く社会環境の移り変わりを興味深く読みました。
(2017年9月刊。860円+税)

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