弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年1月25日

興隆の旅

中国


(霧山昴)
著者  中国・山地の人々と交流する会 、 出版  花伝社

 日本軍・三光作戦の被害にあった中国の村を日本人一行が訪れた記録集です。
 中国河北省興隆県は北京市の北東に位置し、三方を長城で囲まれた山深い地域。1933年の日本軍による熱河作戦によって満州国に組み込まれた。それ以降、抗日軍と日本軍の激しい攻防が繰り返された。
 興隆県は1996年まで外国人に対して未開放区だった。そこへ、1997年8月、日本の小中高校の教師集団が訪問したのです。
ここには、人圏があった。人を集中させて、八路軍を人民から隔絶させ餓死させようと考えて日本軍がったこと。人々は、着るものも食べるものもなく、すべて日本軍に奪いとられた。
 日本人訪問団は日本から持っていった算数セットをつかって算数の授業をした。授業が終わると、校庭で教材贈呈式。そのあとは子どもたちとフォークダンス。宿泊は、村内の農家に25人が分宿。ホテルも宿泊施設もない村で、25人もの訪問団を泊めるのは、村にとって一大事件だった。
日本軍の蛮行で被害にあった体験を村人が語りはじめます。本当は、今日、ここに来たくはなかった。日本人を恐れていた。でも、今日来ている日本人は前に来た日本人とは違うと言われてやってきた。
日本軍の憲兵は、中国人を捕まえて投降させ、スパイにて中国人を殺させた。男たちは全部捕えられ、女と子どもしか残らなかったので、ここは「寡婦村」と呼ばれるようになった。無人区で中国人を見つけたら、一人残らず殺す。それが当時の日本軍のやり方だった。
2010年8月まで、11回も続いた日中交流の旅でした。日本人のゆがんだ歴史認識は、その加害の真実を知らない、知らされていないことにもよると思います。私自身もそうでした。しっかり歴史の真実を知ることは、真の日中友好の基礎ではないかと思います。日中友好の旅の貴重な記録集です。
(2017年3月刊。1600円+税)

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