弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年1月17日

ビッグデータの支配とプライバシー危機

社会


(霧山昴)
著者  宮下 紘 、 出版  集英社新書

完全なネット社会になった現在、私たちのプライバシーは丸裸も同然という気がしてなりません。
2010年10月、警視庁公安部の日本に居住するイスラム教徒に関するデータが外部に流出しました。ターゲットにされたイスラム教徒は1万2677人。その氏名・生年月日、住所、電話番号、身長、体重、ひげ、メガネ着用の有無、交友関係のデータでした。
2013年5月から12月にかけて大阪府警は令状なしに容疑者の車両19台にGPSを取り付け、3ヶ月で1200回以上も検索した。
丸善ジュンク堂書店では、店舗における万引き対策として、顔認証カメラが導入されている。
ビッグデータは、単なる個人データの集合体としての統計データではなく、その統計から導き出された、パーソナライズされ、カスタマイズされた情報。監視の対象は人ではなく、データであって、特定のターゲットではなく、あらゆるデータをかき集める。そして、事後的な検証ではなく、事前の分析予測によってビッグデータは成り立っている。
ビックデータの典型例は、アマゾンの「おすすめの本」があげられる。
同窓会の名簿買取価格は1冊7000円から3万円。展示会入場者データは1件あたり50円。ベネッセの流出リストは、5万から16万円の値段で800万件の個人情報の売り込みがなされた。
単純な個人情報の漏えい事案における賠償金額は1人5000円から1万円というのが相場。
防犯カメラの設置と犯罪の増減の動向には相関関係はない。
人は忘れる。しかし、インターネットは忘れない。忘れられる権利は、EUが主導している。
この本を読むと、マイナンバー登録なんて、プライバシー丸裸を手助けするものでしかないと痛感させられます。タイムリーな新書です。
(2017年3月刊。760円+税)

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