弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年11月 6日

死ぬほど読書

人間

(霧山昴)
著者 丹羽 宇一郎 、 出版  幻冬舎新書

ビジネス界きっての読書家だというのは私も知っていましたので、同好の先輩に敬意を表して読んでみました。私がうらやましく、また、ねたましいのは本書が13万部も売れているということです。私だって、いつかは「万冊」が売れないものかと願っているのです。それまでは、しがない、「売れないモノカキ」と称するほかありません。トホホ・・・。
著者は私より10歳ほど年長で、名古屋大学法学部を卒業しています。学生のころは学生運動に熱中し、マルクス・エンゲルス、そしてレーニンを読みふけったとのこと。私にも共通するところがあります。私には、マルクスの文章は少し難しく、レーニンのほうが日本語の訳文が良かったのか、明快で理解できました。
伊藤忠商事に入り、アメリカ駐在員として大損を出したり苦労しながらも、同社の社長、そして会長をつとめています。その後は、中国大使もつとめています。対中国との交流についての発言には私も共感することが多いです。
読書は、まがいものでない、真に自由な世界へと導いてくれる。「何でもあり」の世界は一見すると、自由のようだけど、自分の軸がないと、実はとても不自由。前へ進むための羅針盤や地図がないのと同じだから。自分の軸をもつには、読書で「知」を鍛えるしかない。
人間にとって一番大切なことは、自分は何も知らないということを自覚すること。何も知らないという自覚は、人を謙虚にさせる。
まったく、そのとおりです。私がこうやって年間500冊の単行本を読み、毎日、書評を載せているのは、世の中にいかに知らないことが多いか、日々、驚き、発見しているからです。本を読めば読むほど、いかに知らないことが多いかを実感させられます。
本は人間力を磨くための栄養。これは草木にとっての水と同じもの。
教養を磨くものは、仕事と読書と人だ。私も、まったく同感です。弁護士の仕事だけでは足りません。本を読んでいるだけでも足りません。そして、人と対話しないと分かりません。
想像力は現実を生きていくうえで、とても大切なこと。そうなんですよ。想像力がないと人間は豊かに生きていくことができないのです。
私はヒマを見つけて書店に行きます。そこにはわくわくする出会いがあるからです。著者も同じことを言っています。ネットで検索するだけでは足りません。やはり、町の本屋まで足を運んで、彼氏、彼女との出会いを求めるべきです。
私は本を読んで、これはと思うと、ためらうことなく、赤エンピツで棒線を引きます。そして、あとで読み返して、こうやって書評として書き写します。それで記憶に定着させ、次いで安心して忘れます。
読書は感情をも磨いてくれる。
まさにそのとおりです。いい本に出会うと、私は人知れず涙を流し、胸をときめかします。よかった、こんな本に出会えて・・・。その感動、感激を書評に反映させたくて、もう15年以上も、この毎日の書評を続けています。たまに(たまーに、というのが残念なのですが・・・)、反応を聞くと、うれしいのです。著者のますますのご活躍を心より祈念します。
(2017年8月刊。780円+税)

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