弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年10月15日

サバイバル登山入門

生物

(霧山昴)
著者 服部 文祥 、 出版  デコ

私は勇気がないし、臆病な人間ですので、誰もいない山中で一人で寝るなんて出来ませんし、するつもりもありません。そんな私が、著者の本を読み続けているのは、要するに怖いもの見たさです。活字を通してなら、いくらでも知りたいのです。その場に身を置く勇気はなくても、もしもそこにいたら、どうしたらいいだろうと想像するくらいは許されるでしょう。
山ではヘビは貴重なタンパク源。ベトナム戦争が盛んなころ、解放戦線の兵士(べトコン)は、ヘビを見つけたら逃がすことはなかった。同じことは、南方戦線の日本兵士もしていた。
マムシはヘビの中でもっともうまく、山ウナギとも呼ばれる。肉と骨を石でつぶしてミンチしてから炒めると美味しい。うひゃあ、そ、そうなんですか・・・。つかまえたシマヘビを著者がかじっている、とんでもない写真があります。
イノシシは「豚汁」がおいしい。豚肉の味を濃くした感じで、味噌との相性が良い。
シカ肉は当たりはずれがないが、劇的にうまいこともない。イノシシは当たりはずれがあり、当たると舌がとろけるようなうまさ。クマ肉も当たりはずれが大きく、うまいクマ肉は、「肉とはこれだ」と思わせるような光り輝く脂で、とてもおいしい。
シカなどを鉄砲で撃つときの状況、イワナの釣り方が図解されていて、イメージがつかめます。そして、解体作業は写真つきです。
山でキノコをとって食べたいとは思いますけれど、毒キノコを食べたら大変です。ところが、著者は、おいしいキノコと、おいしいキノコに似た毒キノコを覚えればいいと言います。本当でしょうか・・・。
「寝る食う出す、がうまく出来たら、その登山は成功」
そうでしょうが、そのどれもが山の中では簡単なことではありませんよね。
野営地の選び方、野営の手順、タープの張り方、夜の過ごし方が図と写真で説明されています。ステンレス製の茶こしを蚊帳(かや)がわりにするなんて、そんなワザがあったんですね、驚きました。
サバイバル登山でもっとも辛いのは、害虫に食われたり、刺されたりすること。クマとかイノシシではないんですね・・・。ハチによるアナフィラキシーショックが起きたら、そういう人生だと思いなさいって・・・。トホホ、です。
いやはや、手取り足取り、なんでも親切に解説してあります。でも、私にはとても出来ません。サバイバル登山を繰り返してきた著者も、今では3児の父親だそうです。これからも引き続き元気に過ごしていただき、読ませて下さい。私にも、ちょっぴり疑似体験を味わわせて下さい。よろしくお願いします。
(2016年1月刊。2500円+税)

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