弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年10月14日

山奥の小さな旅館が外国人客で満室に

社会


(霧山昴)
著者 二宮 謙児 、 出版  あさ出版

タイトルに惹かれて読んでみました。山奥の小さな旅館といいますから東北地方の山奥かと思うと、なんと大分は湯布院町の湯平(ゆのひら)温泉にある旅館です。私も、もちろん湯布院の温泉には何度も行ったことがありますが、湯平温泉というのは知りませんでした。そこにある家族経営の小さな旅館「山城屋」の話です。
私がこの本を読んで驚いたのは、なんといっても旅館なのに週休2日制を完全実施しているということです。すごいです。偉いと思いました。たしかに家族経営で年中無休だったらたまりませんよね。家庭生活も基本的人権もあったものじゃありません。
ところが山城屋は水曜日と木曜日は定休日として、旅館自体が休みなのです。そのうえ、盆、暮れ、正月も休みです。ここまで徹底するとは、たいしたものです。いいことですよね。
その理由について、疲れた顔では安心感は与えられない、お客様の前では常に万全の状態でありたいというのです。心からの拍手を送ります。
いま、日本の旅館は全国に4万軒ある。10年後には3万軒もないだろう。湯平温泉の旅館は60軒あったのが、今や21軒と3分の1まで減少した。
この山城屋が稼働率100%を維持しているのは、インターネットを活用しているから。韓国や中国からインターネットで予約して宿泊客がやって来る。予約は半年も1年も前から殺到するので、結果として、日本人客より外国人客のほうが多くなった。今では外国人客が8割を占めている。
旅館のホームページは4ヶ国語で対応している。韓国語、中国語、そして英語。
客室は7室。つまり1日最大7組しか受け入れられない。食事は和室にイスとテーブルを置いたレストラン形式だ。客には歓迎されているという安心感を実感してもらう。
こんな家族経営の小さな旅館に泊まってみたくなりますよね。
(2017年7月刊。1500円+税)

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