弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年4月 4日

熱狂の王、ドナルド・トランプ

アメリカ

(霧山昴)
著者 マイケル・ダントニオ 、 出版  インプレス

 アメリカの変な大統領の実体を知らなくては、と思って読みました。本当は読みたくもないのですが、読まざるをえません。
 ドナルドは、普通の実業家ではなく、他に類を見ないやり方で、政治権力を利用できる人々とのつながりを築いていた。「話をつける」ときには、利益や脅しで動く政治家たちが関わるのが常だった。
 トランプタワーをつくるときには、「ポーランド軍団」と呼ばれる不法就労者の数百人を熟練作業員20人あまりに監督させながら使った。熟練作業員はマフィアがらみの作業員組合から連れてきた。ポーランド人の労働者たちは、労働時間は週7日、1日18時間労働で働かされた。そして、寝るのは、ぎゅうぎゅう詰めの部屋が解体のビルの床。賃金は組合基準よりずっと少なく、支払いもまちまちだった。不満を言えば国に送り返すと脅された。代わりはいくらでもいた。
マフィアに抵抗する建設業者は放火されたり、機材などを盗まれたり、作業を止められたりするので、逆らわない方が安全で、結局は安上がりだった。
これって、今の日本の公共工事について暴力団が総工事費の2%とか3%をピンハネしているのと同じ構図ですね。
 ドナルドが有名人になれたのは、彼のような人物にあふれんばかりの関心を注ぐ、新種とも言えるマスメディアが出現したからだった。ドナルドにとって、メディアに出ることが、エゴを満たす必須の栄養素なのは明らかだった。
トランプのように美男子でなくとも、金と名声と社会的地位という成功の現代的定義に当てはまっていさえすれば、「セクシーである」と認められた。メディア時代のセレブに不可欠な3大要素は、名声と富そしてセクシーさだ。
ドナルドは、酒もドラッグもやらず、タバコも吸わない。女好きなだけ。
トランプには資産はあっても、手持ちの現金はなかった。
トランプは結婚する前にかならず婚姻契約を妻となる女性と取りかわした。
イヴァナはトランプと離婚したとき、前払いとして1000万ドル、そして、子どもの養育費と生活費として年に65万ドルを受けとることになった。
ドナルド・トランプは、有名であることをお金に替える方法を知っていた。ドナルドは、自分のプライバシーも金もうけのネタであることを知り、利用していた。
破綻したはずのドナルドに対して、債権者は毎月45万ドルを支出することを認めた。
上流階級が格好をつけるために骨を折っていた昔と違い、現代のセレブたちは自ら進んで恥知らずなショーを大衆に提供する。セレブたちは悪行を重ねても、次々とスキャンダルを乗りこえてスポットライトを浴び続ければ、お金を稼ぐことができるのだ。
 ただし、これには相当な面の皮の厚さが必要で、無傷のままで有名になれる者はごくわずかだ。有名になりたいものとは嘲笑され、屈辱されても、平気なくらいタフでなくてはならず、それでも完璧な笑顔を保ち続けなければならない。名声とはドラッグのようなもので、いったん中毒になると、それを手に入れるためには何でもするようになる。自分の存在が忘れられないよう、メディアに自ら話題を提供するのだ。
 金持ちで見栄のいい男としてメディアと大衆の注目を集めることに成功したトランプは、その後も注目を求め続けた。中年太りとたたかい、常に高級なスーツに身を包み、髪の毛を守るために最大の努力をささげてきた。「はげるのは男として最低だ。絶対にはげになってはいかん」
私は幸いにもはげてはいませんが、これって遺伝的なものが大きくて、本人の努力だけではどうしようもないと思うのですが・・・。
 この本は、最後に、ドナルド・トランプは特異な男ではない。彼は、むしろ現代を生きる我々の誇張された姿に過ぎない。こうしめくくっています。
 それにしても最悪の人物がアメリカの大統領になりましたね。超大金持ちを、豊かでない大衆が手を叩いて支持するなんて、最悪です。まるで過去のヒトラーの再現のような気さえします。もちろん、大虐殺はしないでしょうが、それでも、あきらかな人種差別を公然と口にするところは共通しています。
 日本だって「政治改革」で最悪の小選挙区制が実現し、国鉄民営化で、安全無視のJR各社が誕生し、郵政民営化でアメリカ資本が日本の保険業界でむさぼり、身近な郵便局が次々になくなっています。一時の熱狂をかきたてた新聞もテレビも、今ではどこも経営困難に直面しています。もっと、日本人の私たちも足をどっしり地につけて考え議論し、投票行動で意思表示すべきなのだと、つくづく思います。

(2016年10月刊。1780円+税)
東京は日曜日に桜が満開だといいますが、まだ4分咲きです。今年は桜の開花が1週間ほど遅れています。入学式に間にあいそうです。
チューリップのほうも少し遅くて8分どおり咲いています。
日曜日の午後、やわらかい春の陽差しを浴びながら庭の手入れをしました。ウグイスが青空の下で気持ち良さそうに高らかに鳴いています。先日、観音竹の葉先が目にあたって痛い思いをしましたので、庭をすっきり整理しました。春本番です。

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