弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年2月10日

進駐軍が街にやって来た

司法

(霧山昴)
著者  堤 淳一 、 出版  三省堂書店

 私の敬愛する東京の先輩弁護士が書いた本です。日弁連の弁護士業務委員会でご一緒させていただきました。
 年に2回、盆暮れに事務所報を送っていただきますが、その歴史読み物は秀逸です。ともかく半端な掘り下げ方ではありません。よくもここまで調べたものだと驚嘆しています。
 弁護士生活50年を迎え、これまで所報に書いた文章を選び出して一冊の本にまとめられています。有事法制や日本の防衛問題の点では著者の考えは私と一致しませんが、その指摘には、なるほどというところがたしかにあります。
 著者は居合道を55歳で始めて、今も続けているとのこと。すごい粘りです。今では三段です。
居合道では、敵は頭の中で想定されたもので、実際にはいない。要するに居合は形(かた。所作)を修業するのであって、居合において斬突する相手はイメージである。
 ガリ版、そして「ガリ版をきる」という懐かしい話も出てきます。私も大学生のころは、必死で「ガリ切り」をしていました。コピー機なんて、なかったころの話です。
そして、この本の白眉は、横浜大空襲と飢餓の体験談です。
 アメリカ軍のB29が昭和20年(1945年)4月、5月、横浜を襲いかかりました。当時37歳のカーチス・ルメイ少尉が指揮する大空襲でした。このカーチス・ルメイは、まさしく「大放火魔」と言うべき人物であり、ベトナム戦争では「ベトナムを石器時代に戻すと高言し、実行しました。アメリカ軍は、昭和20年以降は4~5000メートルの高高度から、もっぱら焼夷弾をもって民家を焼き払うことを狙った。
ところが、戦後の日本は、こともあろうに「大放火魔」のカーチス・ルメイに勲一等という大層な勲章を与えているのです。日本政府には信じられないほど、アメリカ人へのおべっか使いばかりです。日本の政治がアメリカにこれほどまでに従属しているかと思うと、思わず泣けてしまいます。
戦後の日本において、子どもたちの遊びが絵入りで紹介されています。懐かしい思い出がたくさんで、ありがとうございました。
(2016年11月刊。2000円+税)

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