弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年2月 6日

腸科学

人間


(霧山昴)
著者  ジャスティン・ソネンバーグ 、 出版  早川書房

 私は子どものころから胃腸、とくに腸が丈夫ではないと自覚していますので、腸のことをもっと知りたいと思って読みました。この本は腸内細菌がとても大切な役割を果たしていることを強調しています。
 腸内にすむ細菌や真菌は、人体と環境間で起きる相互作用を決め、アレルギーや自己免疫疾患の発症や予防にもかかわっている。肥満や糖尿病を引き起こすのを防ぐのも、体内の炎症を抑えるのも、悪化させるのも、これらの細菌だ。
 人と微生物の共生関係は人が誕生したときに始まる。人は母親の子宮内では無菌状態にあるが、外界に出たとたんに無菌の身体に菌がどんどんすみついていく。小さい子どもが何か物を口に入れようとしたら、細菌の膜が新たなマイクロバイオータを形成するために貴重な微生物を提供してくれていると考えたらいい。
 腸内細菌がヒトの健康と幸福に欠かせないものだという証拠はたくさんある。人の腸内には、100兆個をこえる細菌が暮らしている。その大半は大腸をすみかとしている。大腸には、数百種をこえる細菌が全部で100兆個以上すんでいて、その内容物を小さじにすくうと、一杯あたり5000億個の密度でひしめいている。小腸内にすむ微生物は比較的に少なく、小腸の内容物を小さじにすくうと、一杯あたり、わずか5000万個しかいない。
 過剰に加工された欧米の食事、抗生物質の乱用、殺菌がすすんだ家屋などによって、腸内の住人はその健康と安全が脅かされている。
 ヒトは、腸内にいる微生物とずっと折り合いをつけてきた。ヒトは腸内マイクロバイオータを必要としている。腸内マイクロバイオータがあるだけで、やせた健康なマウスに体重増加が起きる。
アメリカでは、出産の3分の1以上が帝王切開である。帝王切開で産まれた人には肥満、アレルギー、セリアック病そして虫歯にかかりやすい。帝王切開で産まれた赤ちゃんには、母体の窒に綿棒で細菌を採取し、赤ちゃんの体の複数個所にそれを移植してやるといい。
母乳にふくまれる主要成分の一つは、それを飲む赤ちゃんは消化できないので、役に立たない。しかし、それはマイクロバイオータの食べ物になる。つまり、母乳は、赤ちゃんに飲ませるだけでなく、赤ちゃんの胎内にいる100兆個の細菌にも食事を提供している。
犬を飼っている家庭ではぜん息が減る。あまりに清潔な環境で子どもを育てるのは、その子の免疫系の発達にとって長期にわたって悪影響を及ぼすおそれがある。
腸内細菌を大切にすることは大切なことだということがよく分かる本でした。そのための食事レシピも紹介されています。要は食物繊維をたくさんとること、あまりに清潔すぎるのは良くないということのようです。早速、実行してみましょう。
(2016年11月刊。1900円+税)

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