弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年7月 3日

『闘戦経』に学ぶ日本人の闘い方

人間

(霧山昴)
著者 斎藤 孝 、 出版 致知出版社 

私は知りませんでしたが、平安時代の末期に書かれた戦いの極意の書であり、日本最古の兵書『闘戦経(とうせんきょう)』にもとづいて、いま考えるべき心得を分かりやすく解説した本です。
 著者は授業をはじめるとき、教室に入る前に体を上下に揺すったり、ジャンプしたりして気合いを入れ、心身を活性化してから中に入る。
今日は何だか、かったるいなんて気持ちで授業に向かったことは一度もない。授業も一つの闘いなのだ。
 「てん・しゅ・かく」の三つをしっかりしないといけない。「てん」はテンションを高く保つこと。「しゅ」は修正能力。「かく」は確認を怠らないこと。
メールのやりとりは、すべて記録として残るので、決していい加減なことは言わない。
問われたときには、とにかく答えること。大切なのは答えの出来不出来ではない。何かしら言うこと。それは決断するというのと同じこと。
ネットに写真や発言をアップするときには、全世界に拡散するという覚悟でのぞむ必要がある。
部下に対しては、相手を信じて、ちょっと難しいミッションを設定し、それを正当に評価し、できていたらほめてあげること。それで人は意気に感じてがんばる。
期待されると、その思いにこたえたくなる。それが人間の本道。
勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。つまり、負けるときには、必ず理由があるということ。
臨機応変力こそ、今の時代に求められていること。
デカルトは『方法序説』で、とにかく考えて考えて考え抜けと説いた。これ以上は考えられないというところまで行った末に結論が出たら、一気に断行する。これを実践することによって、デカルトは、世の中の不安と後悔から一生脱却できた。
軍の基本は、攻めて相手を滅ぼすのではなく、災いをあらかじめ防ぐことにある。
現代に生きる私たちにも役立つ指摘というか教訓がたくさんありました。

(2016年1月刊。1400円+税)

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