弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年5月27日

コーランの読み方

社会


(霧山昴)
著者  ブルース・ローレンス 、 出版  ポプラ新書

イスラム教は、ばらばらの項目を暗記するようなものではなく、力強い論理的体系の中に信者を押さえ込む。その論理を把握することが重要だ。
イスラム教は、あくまでも人間の側がどのように感じるかどうかとは無関係に、絶対の力をもつ神が人間に命令するもの。人間は、それを信じて生きていく以外に選択肢はない。他に選択肢はないということを知ることで、永遠に確かなものを得たと信者は感じ、安心する。
コーランは、寛容性と攻撃性を同時に備えている。なぜなら、人間と人間社会がそれらを併せもっているからである。コーランは、人間性の相反する側面を包摂するがゆえに説得力をもつ。コーランは、人間の弱さを認めたうえで、神に人間を帰依(きえ)させるという目的に合わせて制御し、方向づけようとする。その意味で、テロがイスラム教と無関係であるとのみ主張するのは、ある意味で神を冒瀆するものだろう。
コーランは、最初から最後まで一度に読むようには出来ていない。
コーランは、人間の力ですべて理解できたと思わせるようには書かれていない。
コーランは、人間の手で書かれたという形式をとっていない。コーランをその口で語ったムハンマドは、信仰者の立場からは、神による啓示を預かって人間世界に伝えた「預言者」であって、コーランを著した人間ではないとされる。
コーランは、他の書物と違って、口承の書である。黙読するよりも、誦みあげられたほうが響く。コーランの読誦を聞くことで、ムスリムは魂への洞察と道徳の導きを得る。
コーランは、純粋な形式によるメッセージなのである。この形式は驚くべき純粋さとともに迫真の力を備えている。
ムハンマドは、一介の商人だった。ムハンマドの出自は平凡である。父親はムハンマドの出生前に死亡し、幼いうちに祖父も亡くした。
ムハンマドは歩くコーランだった。ムハンマドの行動とは、コーランが実践に移されたものである。
女性の権利はイスラム教の精神を規定する中心的なもの。アーイシャ(ムハンマドの妻)が示した範によって、ムスリム女性は勇気づけられ続け、ムスリム男性の敬意を引き出している。
アッラー以外に神はなしと神ご自身が証された。全能にして全知の彼以外に神はなし。神において真の宗教とは、イスラム。
ムハンマドは神の預言者なり。ムハンマドに神の祝福あれ、アッラー以外に神はなし。彼こそは一者にして、並ぶものなし。ムハンマドは神の預言者なり。
ムハンマドは僕(しもべ)であったが、主の姿をどこまでも映すことで完全な人間となった。ムハンマドは、「神の光」を伝えるかがり火であった。
コーランには何が書かれているのか、ほんのちょっぴりのぞき見した気のする新書でした。
(2016年2月刊。820円+税)

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