弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年3月29日

病める社会、相談現場から

社会

(霧山昴)
著者  ふくみつ 洋一 、 出版  くらしの相談センター

 横須賀市内で、くらしの相談センターを営んできた著者のすさまじい活動が活字になっています。今の日本社会のかかえている問題点を生々しく紹介した貴重な記録です。
 私は、本書を読みながら、北九州市小倉北区で同じような活動をしていた西辰雄さんを思い出しました。西さんも、著者とまったく変わらず、いろんな生活相談を受けていました。大変な苦労を伴う活動だと思うのですが、いつもひょうひょうとした物腰で、疲れを見せませんでした。
 「不況で勤め先が倒産。ハローワークに通っても求人はない。50歳を過ぎると、足を棒にして探しても就職先は見つからない。いま3人家族で、妻のパート給料の6万円で暮らしている。お先、真っ暗。どうにもならない」
 「下町で事業をしていたが、共同経営者は蒸発。膨大な借金をひとり背負って倒産。59歳だが、妻は半年前に心筋梗塞で死んで、家賃も半年分滞納している。追い出されたホームレスになってしまう・・・」
 「小学生2人をかかえた40代のシングルマザー。求人広告を頼りに面接に出かけても、子どもかかえた40代の女性は雇ってもらえない。今月中に支払わないと、電気・ガスも止められてしまう」
 「生活保護を受けようと思って保護課に行くと、病気で働けないという医師の診断書がなければ、と断られた。週3日、パートで働いている。もっとたくさん働ける仕事を探してから来るように言われた。そう言われても働く場所なんて見つからない」
 1ヶ月に100人ほどの相談を受けたことがあった。新規相談だけでも50人。平均して月30件の新規相談。土曜も日曜も休みなく、平日だって夜7時からスタートすることがある。一人の相談時間は平均して2時間。DVについて、親子をまじえて5時間かけたこともある。午前10時から夜8時すぎまで、びっしり。昼食が3時ころになったこともある。
 不誠実な人、利用するだけしようという人には突き放すこともある。しかし、ほとんどの人は、悩み、苦しみ、すがる思いでやって来る。なので、どんなに疲れていても、疲れた顔を見せれられた信頼関係が成り立たない。どの人とも対等平等に話し合う。
 事務所を維持するのに月30万円はかかる。すべてカンパに頼る。 
 「眠れなくなった。食欲もない。パートの仕事は出来なくなった。自殺も失敗した・・・」
 「ケータイ料金を支払えずに止められた。ケータイがないと仕事も見つからない。ケータイを買うお金がない」
 「ネットで知り合った男性と同棲するようになった。事業資金が足りないというので、親戚のおばさんを騙して借金して貸してやった。男性は、お金をもち逃げした。男に騙されていたことが分った・・・」
 本当に深刻な相談のオンパレードです。それを20年以上も受け止めてきたのです。偉いですね。ゆっくりおやすみください。
 横須賀の根岸義道弁護士から押し売りされた本です。いい内容なので紹介したくなりました。
(2015年10月刊。1500円+税)
 わが家の庭はすっかり春満開となりました。色とりどりのチューリップがたくさん咲いています。朝、雨戸を開けるのが楽しみです。朝のうちは、三角おむすびのような形をしていて、昼には花が開いています。ハナズオウの木が小豆(アズキ)のような豆粒の花をたくさんつけ、アスパラガスが採れはじめました。春の香りを口中に感じる楽しみは、まさしく春を満喫していると実感します。
 団地のソメイヨシノも満開です。
 ビックリグミの木にとまってウグイスが澄んだ声で高らかにホケキョと鳴いているそばで、メジロが一心に花の蜜を吸っています。春は本当にいい季節です。花粉症さえ出なければ、、、。

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