弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年3月27日

マヤ文明を知る事典

アメリカ

(霧山昴)
著者  青山 和夫 、 出版  東京堂出版

  マヤ文明というとメキシコ半島でしょうか。でも、頭の中では、インカ文明と似たようなものでは・・・と、明滅します。しかし、この本を読むと、マヤ文明についての間違った認識があちこちで正されます。
マヤ文明は9世紀に崩壊したのではない。16世紀まで社会全体として発展していた。現在も800万人以上のマヤ人が、30ものマヤ諸語を話し、今も生きている文化を力強く創造し続けている。
マヤ文明は、前1000年ころから16世紀にスペイン人から侵略されるまで続いた。マヤ文明では、16世紀まで鉄器を用いずに、石器を主要な利器として使い続けた。
マヤ文明は、人類史上でもっとも洗練された、究極の「石器の都市文明」であった。
マヤ文明は、人類史上でゼロの概念を最初に発明した。
マヤ人は、手足両方の指で数をかぞえて20進法を使った。マヤ文明は、ゼロの概念を知っていた。
マヤ文明では金属器が実用化されず、鉄は一切使用されていなかった。マヤ文明は機械に頼らない「手作りの文明」だった。
大型の家畜がいなかったために、荷車や犂(すき)は発達しなかった。
マヤは、「ミルクの香りのしない」人力エネルギーの文明だった。家畜は七面鳥と犬だけでウシやウマなどの大型家畜はいなかった。牧畜もなく、リャマやアルパカのようなラクダ科動物もいなかった。
マヤの支配層は、王、貴族、戦士を華ね、美術家、工芸家でもあった。多様な農民とは一線を画した。
マヤ族ではなく、マヤ人と呼ぶべきだ。ただし、標準語の「マヤ語」なるものはない。マヤ民族という単一民族は過去にも現在も存在しない。
マヤ原産の花には、コスモス、ポインセチア、マリーゴールド、ダリアがある。うひゃあ、私の庭にも咲いている花たちです。
マヤ文明には、暦があった。マヤ文明は、太陽、月、金星その他の星を肉眼で驚異的に正確な天文観測を行った。
マヤ文明には文字体系があった。それはアルファベット原理とは異なり、漢字仮名まじりの日本語とよく似ている。そして、マヤ文字は支配層だけが使う宮廷言語であり、王族と貴族の男女の秘技だった。
マヤ文字の碑文には、天文学、暦や宗教そして個人の偉業や歴史も含まれている。
マヤ人は死後の世界を信じていた。
世界の「四大文明」というのは事実に反していると厳しく批判しています。南米のアンデス文明と中米のメソアメリカ文明をふくめて世界6大文明と言うべきだとしています。この本を読んで、そこに写真で紹介されている遺跡と発掘物の見事さを知ると、なるほどと思いました。
トビラ写真にある戦闘場面を描いた壁画のカラー写真をみると、たしかにここにはすごい文明があったと実感させられます。
(2015年11月刊。2800円+税)

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