弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年11月28日

中国人の頭の中

中国

(霧山昴)
著者  青樹 明子 、 出版  新潮新書

  かなりの日本人がアベ政権のあおりたてる中国脅威論に惑わされて「中国って、何となく怖い国だ」と思い込まされています。そのため、観光目的で中国へ行く日本人が激減しています。ところが、中国人の訪日はすごいものです。「爆買い」という目新しいコトバまで出てきました。日本って、安心、安全な国だというのです。そして、日本製品への高い信頼感から、ベビー用品、炊飯器、ウォシュレットまで、日本で買い込んで中国へ持ち帰るのです。日本の景気回復に中国人の「爆買い」は今、大きく貢献しています。福岡でも、連日、港に大型客船が入港し、県内中にある観光バスが出迎え、キャナルその他の店へ送迎しているのです。大変な経済効果です。
  本書は日本人と中国人との相互不信を取り除きたいと頑張ってきた日本人女性の体験にもとづく本です。なるほど、そういうことだったのかと、思わずひとり納得することが多々ありました。
  日中文化交流をすすめるキーポイントは、一流のもの、最新のものを送っていくこと。
  採算を度外視して、日本映画を中国に紹介し続けた日本の映画人たちがいた。
  これってすごいですね。心から敬意を表します。
中国製も、それなりに高性能だ。しかし、日本製は、本当に高性能。日本製の炊飯器を使った中国人は一様に驚く。米が水を吸収し炊き上げていく過程は、まさしく先進科学。実に精密にできている。炊き上がったご飯は、ふっくらしていて、やわらかくて、おいしい。そして、使い勝手が中国製と段違いだ。中国製は、炊き上がると周りに水が漏れる。日本製は、もちろん水漏れしない。日本製だと内釜にお米の粘りが残らないから、洗うときにラク。主婦として、この差は無視できない。
  日本製品は、正規の保証書さえあれば、どこでも修理してくれる。中国製は、アフター・サービスの点で、かなり劣る。日本製の驚くべき点は、保証書と領収書があれば、きちんと修理してくれること。しかし、もっと驚くべき点は、壊れて修理したという話を、あまり聞かないこと。
  2015年春節の爆買いでブームになったのが、日本製便座。中国製シャワートイレは、日本製と似て非なるものの典型。中国製シャワートイレは、いきなり熱湯が出た。しばらく噴水のように熱湯がトイレ中にあふれて、床が水浸しになった。
  水温、マッサージ、節電機能、すべてにおて至れり尽くせりの日本製は、中国では入手できない。
  なーるほど、そういうことだったのですね・・・。
  そして、食。食に対する中国人の不信感は、日本人の想像をはるかに上回る。一定レベル以上のレストランで食事をしても、知らないうちに粗悪な食材が口に入ってきてしまう。事態は深刻だ。ニセモノの羊肉。ネズミやキツネの肉を、ゼラチン、亜硫酸塩で加工し、これにカルシウム酸という着色料をつけて完成させる。こんなとんでもないニセ羊肉が、上海の自由市場を経由して大手レストランにも大量に流通していた。トホホ・・・ですね。
  日本では、水も空気も、安心かつ安全。食べるものも安心、安全。何を買っても安心、安全。だから、日本に行きたい。いつまでも、そんな日本でありがたいものです・・・。
  日本と中国の裏の裏まで知り尽くした日本人女性の体験レポートです。
  久しく中国に行っていませんが、近いうちに中国に行ってみたいなと思いました。

(2015年9月刊。700円+税)

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