弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年9月19日

日本とイスラームが出会うとき

社会

(霧山昴)
著者 小林 明子   出版 現代書館
 
2014年現在、日本全国にあるモスクやムサッラーは80ヶ所。
ムサッラーは簡単な礼拝施設のこと。
日本のムスリム人口は10万人。
山梨県甲州市には、1万平方メートル(2700坪)のイスラム霊園がある。
日本人がイスラムへ改宗する理由の多くが結婚による。一般に、イスラームにおいて「棄教」は認められない。それは、刑罰では死刑になる。
日本自動車ユーザーユニオンで活躍していた安倍治夫弁護士(故人)が、日本イスラム教団の専務理事だったことを初めて知りました。
これまで日本にイスラームが広まらなかったのは、宗教的な感覚、あるいは価値観の違いが原因と思われる。イスラームは一神教の価値観で実践される宗教・文化であり、それは日本社会の習慣にあっていない。日本の宗教的伝統は、多神教的であり、非常にあいまいである。宗教の教義により社会や日常生活に厳密な規定があるイスラームとは根本的に異なっている。
イスラームでは、他の宗教のように「輪廻転生」(りんねてんしょう)を認めてはおらず、人間は楽園か火獄(かごく)のどちらかに行き、永遠の命を与えられる。だから、イスラムには、来世を楽園で過ごすために、現世でイスラームの教義に則した生活を送るよう努めることが求められる。
楽園は水と緑にあふれ、いくら飲んでも悪酔いしない酒を飲み、好きなだけ食べ物を食べることができる。火獄に行くと、業火(ごうか)によって永久にその身を焼かれることになる。
日本とイスラームとの関わりの現実と問題状況を知ることのできる本です。
(2015年6月刊。2600円+税)

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