弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年5月 4日

希望の牧場

社会

                                (霧山昴)
著者  森 絵都・吉田 尚令 、 出版  岩崎書店

 福島第一原子力発電所。そこから20キロ圏内にあった牧場。330頭の肉牛がいた。
 3.11のあと、放射能をあびた牛たちは、もう食えない。食えない牛は売れない。それでも、生きてりゃのどがかわくから、水くれ、水くれってさわぐんだ。エサくれ、エサくれって、なくんだよ。
 だれもいなくなった牧場に、オレはのこった。そりゃ放射能はこわいけど、しょうがない。だってオレ、牛飼いだからな。まったく牛たちはよく食うんだ。エサ食って、クソたれて、エサ食って、クソたれて、まいにち、それだけだ。
 それが肉牛の仕事だもんな。牧場の牛たちは、そのために生きて、死ぬ。それがこいつらの運命。人間がきめた。そして、原発事故によって、人間がくるわせた。
 国は、そんな牛について、殺処分することをきめた。オレは、そうしなかった。
 売れない牛を生かしつづける。意味がないかな。バカみたいかな。売れない牛に、まいにちエサをやる。もうからないのに、金だけかかる。
 いま、牧場には360頭もの牛がいる。原発事故の前よりもふえている。ふしぎだろ?
 知覚の牧場主からたのまれた牛や、迷子になっなってた牛を、ひきとったのだ。
力強いタッチの絵で原発事故による悲惨さを描き出した大判の絵本です。
(2014年9月刊。1500円+税)

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