弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年3月 9日

進化とは何か

生き物


著者  リチャード・ドーキンス 、 出版  早川書房

 ドーキンス博士は、日本でも講演したようです。ぜひ参加したかったと思わせる内容が誌上で再現された本です。生命の神秘が進化とは何かを通じて語られていきます。思わずぞくぞくするほど、エキサイティングな内容です。
人間の脳の神経細胞をすべてつなげると、地球を25周するほどの長さになる。そして、このつなげた神経細胞の端から端まで情報を送るとすると、なんと6年もかかってしまう。
神経系の括目すべき点は、細胞の数ではなく、むしろそのつながり方にあり、その複雑さは驚くべきもの。脳内の突起にあるコネクションを数えると200兆にもなる。
 血液の中で、酸素を運搬する分子であるヘモグロビンは、6×10の21乗もあり、それぞれがすべて非常に複雑な構造になっており、みなまったく同じ形をしていて、血液中で常に古くなったものは壊され、新しいものが毎秒400兆個の割合でつくられている。
 ツツハナバチは、メスのハチが小さな石を集めてきて、それらをまるでセメントで固めるように固めて、素晴らしい瓶をつくる。一つの瓶のように見えて、実は、下にまだ瓶が4つも隠れている。
 オーストラリアのコンパスシロアリがつくる塚は南北にそってつくられている。冷しい朝夕は太陽の光で温まり、日中の暑いときには光が頂点を照らすだけなので、それほど暑くならずにすむ。
 トックリバチやカマドドリが瓶や巣を効率よく作るのは、先を読んでのことではなく、むしろ過去の失敗から「自然選択」によって直接選択されてきた結果に過ぎない。
眼の進化に25万世代がかかった。といっても、地質学上の時間のスケールからすると、25万世代というのは、ほぼなきに等しいくらい小さい。25万世代というのは、100万年の4分の1ほどにしかならない。
 眼はたやすく進化する。なぜか・・・・。
 半分の眼でも、眼がないより有利。半分の眼は49%の眼よりも有利で、1%の眼でも眼がないよりは有利になる。
トビヘビは、木の上を這っているときには、普通のヘビ。しかし、いったん木を飛び出すと、体が横にひらべったくなって風に乗り、下のほうに飛んでいって、けがすることなく別の木に着陸する。これは、翼へ進化する第一歩だと考えていい。
ハチによる花粉媒介サービスは本当に大規模である。ドイツ国内だけでも、ひと夏にハチたちは、10兆もの花に花粉を媒介している。人間の食糧の30%は、ハチによる花粉媒介に頼っている。
脳は、人体が搭載するコンピューターである。目が脳に提供するのは、二次元情報である。逆さまの画像を、脳はなんとかして、三次元の情報に置きかえようとしている。
 そこに見える現実だと思っているものは、実は脳の中に構築されたモデルであり、脳内のシュミレーションにすぎない。脳内につぎ込まれた情報は、生のままで見られるというのではなく、脳内モデルを更新していくために使われる。つまり、われわれが現実として把握しているものは、実はコンピューターゲームの世界のように、人間の頭のなかでつくられた仮想現実(ヴァーチカル・リアリティ)なのである。
 とても面白い生物の教科書です。一読をおすすめします。
(2014年12月刊。1700円+税)

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