弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年3月 7日

成長国家から成熟社会へ

社会

著者  碓井 敏正・大西 広 、 出版  花伝社

 政党の固定的支配層は減少し、政治的課題によって離合する傾向が強まっている。各政党の党員は半減している。政党と選挙民の関係は一枚岩ではなく、屈折し、重層化している。
アベノミクスのインフレ政策、円安政策は即刻やめさせなければならない。同時に、ムダな公共投資の復活や大企業減税の停止もなされなければならない。
大企業は、円高による国民利益を通じた消費、つまり内需拡大こそ利益とする体質に自らを転換しなければならない。
 日本は、今や、アメリカに次ぐ貧困大国になりつつある。格差問題で特に重視されるべきは、教育格差である。なぜなら、教育格差は、各種格差の始点となっているから、また世代にわたって継承されるから。
 今の日本は、世界に例をみない高学費によって、高等教育への進学率は、先進国のなかでも中位以下にまで後退している。
 小中学生の全国学力テストでは、秋田や福井、石川のような社会的絆(社会関係資本の強い)日本海側の地域が上位を占めている。
 日本は、安心して離婚を選べる社会とはほど遠い。家族ケアの受けられない一人暮らしの高齢者が増加している。
日本の公務員は大幅に減少している。19494年に比べて国家公務員は3分の1へ激減した。地方公務員のほうは53万人も減った。
 国家公務員の労働組合は連合と全労連で勢力を二分している。労働組合については、組合員数の減少だけでなく、労働組合の単位組織自体が減っている。この30年間に2万の組織が消滅してしまった。
 ゼロ成長経済下で求められるのは、国家に依存しない「社会」内部の諸力の成熟だという主張でつらぬかれた本です。私にとって、やや難しすぎる論調ではありました。
(2014年10月刊。1700円+税)

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