弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年4月19日

40年パリに生きる

ヨーロッパ


著者  小沢 君江 、 出版  綜風出版社

 私がフランス語を勉強するようになった40年以上になります。正確には大学1年生のとき、第二外国語として選択したのでした。
 初めてフランスに行ったのは今から30年ほども前のことになりますが、そのころはフランス語の単語に聞きとれるものがある程度でした。ですから先輩弁護士がフランス語でフランスの弁護士と話しているのがうらやましいというより、アナザーワールドの住人という感じがしていました。今でも話すのはうまくありませんが、耳のほうは、さすがに文章レベルでかなり分かるようになりました。それでも、哲学的表現の多いフランス語の文章は理解に苦しんでいます。
 この本はパリで発行されている日本語の無料誌「オヴニー」の創刊者の苦労話が語られているものです。もちろん日本人です。フランスの男性と結婚して、単身パリに渡ったのでした。
 「オヴニー」の前身「いりふね、でふね」が発刊したのは1974年5月のこと。A4サイズ8頁。今では6万部発行され、うち2万部は日本人に搬入されている。無料誌なので、広告料が発行を支えている。長年の下支えがある。
 全共闘とか、新左翼そして日本赤軍、ひいてはテロリストとの関連を疑われて、警察の探索、差押を受けた。
 「オヴニー」創刊号が出たのは1979年4月のこと。1981年にエスパス・ジャポンを開館した。「日本空間」ということで、日本の文化を披露する場である。
フランスに滞在する日本人3万人の3分の1は官庁・企業関係者とその家族。あと3分の1は留学生・研究者。残る3分の1は永住者(12%)、芸術家など(9%)、その他(7%)からなる。
著者も70歳を迎え、フランスに日本人が住むことの意味をしみじみ考察しています。
 フランス語には、日本語のあうん呼吸、以心伝心の感覚はない。すべてが目には目を式に言葉対言葉の対話文化であり、男女関係でも最後は言葉が支配する。
 日仏カップルの大半は、離婚か離別に終わっている。
 一般にフランス人は言葉を操り、楽しむ習性をもっている。
 言葉の裏や抑揚にニュアンスを込められている日本語。ピンポンのように言葉と言葉でやりとりするフランス語。
 うーん、そう言われても・・・。まあ、ともかくボケ防止に、毎朝、NHKのラジオ講座を聴き、CDでフランス語の書き取りをしましょう。きっと、何かいいことがあるでしょう。
(2013年12月刊。2000円+税)

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