弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年4月18日

小説・外務省

社会


著者  孫崎 享 、 出版  現代書館

 安倍首相は、靖国神社に参拝して、韓国や中国との親善交流よりも、戦争をひき起こすことに喜びを見出しているようです。本当に怖い首相です。そして、マスコミ(とりわけNHKや売らんかなの週刊誌)が、その強硬姿勢をもてはやし、戦争へ駆け出そうという恐ろしい流れが出来あがっています。
 これでは、日本は、外から見るとまるで「軍国主義、ニッポン」ではありませんか・・・。そのことを多くの日本人が自覚し、認識していないため、安倍首相の支持率が6割だなんて、とんでもない数字が出てくるのでしょう・・・。
 著者は、アメリカべったりの外交はもはややめるべきだ、もっと外交を通じて世界と日本の平和を守るために行動しようと呼びかけています。私は、何度も著者の話を聞きましたが、本当にそのとおりだと思います。
 安倍首相の言うような、軍事力に頼って解決することは何もないのです。そこでは報復の連鎖、暴力の応酬が始まるだけなのです。ぜひ、このことを分かってほしいし、広めてほしいと思います。
 この本は、小説とうたいながらも、実名で本人もふくめて登場してきます。だから、本当に分かりやすいのです。
 鳩山由紀夫首相が、なぜ行き詰まって首相の座をおりたのか・・・。
外務省では、アメリカの大学で研修し、在米大使館で勤務したことのある人々を「アメリカ・スクール」と呼ぶ。アメリカとの関係を最重視する人々だ。
 外務省の事務次官そして総合外務政策局長、北朝鮮局長は、歴代、「アメリカ・スクール」で占められてきた。だから、外務省では、アメリカとの関係を維持する、追随するという方針で、すべてが決まってきたし、決まる。
 「アメリカが望んでいない」は、すべての案件を論じるときの切り札となる。外務省では、上司の意見に従う、だけでなく、アメリカの意見に従う。これがすべてだ。
 外務省では、すべてが、この大切な日米関係を、○○事件ごときで損なってはいかんというモノサシがある。
アメリカは、人物破壊という手法をつかう。人物破壊とは、政敵を壊す手段である。特定の人間や組織の信頼性を失わせるために、間違っていたり、誇張されたりした情報などを執拗につかう政治手法だ。その人間を世間から永久に抹殺するという点では、人殺しと変わらない。いわば、殺人の代用方式である。
 アメリカにあるヘリテージ財団は、単なる研究所(シンク・タンク)ではない。スパイ活動と関係している。
石原慎太郎は、実際には、アメリカの評価を実に気にしている。
 アメリカが人を買収するときには、講演会を依頼する。その報酬には限度がない。
 研究所は講演料として、巨額のお金を渡す。そこでは、スパイ容疑はどこにもない。すべて合法だ。
外務省と読売新聞との関係は、きわめて良い。
谷垣は、リベラル色をもっていた。だから、完全にアメリカに追随するのか疑問があった。そこで、谷垣を自民党の総裁選挙の直前におろした。日本の自主政権は許さない。その芽が出たら、汚職で攻める。
 残念ながら、本書で書かれていることは本当だと実感することがあまりにも多すぎます。日本って本当に独立国なのでしょうか・・・。少なくとも、もっとアメリカに向けてきちんとモノを言うべきです。フランス並みに、とまでは言いませんが、せめて同じアジアのフィリピン並みに、アメリカ軍の基地を国内から早く全面撤去させたいものです。米軍基地を撤去したあとを商・工業ゾーンとしたら、みんな共存共栄できると思います・・・。
 いい本でした。小説ですから、さっと読めるようになっているのがいいです。
(2014年4月刊。1600円+税)

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