弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年4月14日

死なないやつら

生き物


著者  長沼 毅 、 出版  講談社ブルーバックス

 生物、そして生命の不思議さを紹介した本です。ええっ、ありえない。そう叫びたくなる話のオンパレードです。
 生命とは、エネルギーを食って構造と情報の秩序を保つシステムであると定義することが出来る。むむっ、これって難しすぎる定義ですね。
 この宇宙で炭素化合物が安定して存在するには、メタンか二酸化炭素になるしかなく、それ以外の炭素化合物は、どれも不安定な状態にある。
 クマムシは、151度の高温でも、絶対零度の低温にも耐える。放射線に対しても、57万レントゲン(5700シーベルト)が致死線量。人間なら500レントゲン(5シーベルト)だから、1000倍もの耐久力がある。ただし、これは、クマムシが体重の85%を占めている水分を0.05%にまで減らしたときのこと。
 ネムリユスリカは、乾燥状態で放置して17年後に吸水させたら、元に戻った。
 ふつうのバクテリアである大腸菌は、少しずつ高圧に馴らすようにしていくと、なんと、2万気圧でも生きることができた。
深海に生きるもののなかには、無機物の鉄を酸化させて、そのときに生じるエネルギーを利用して有機物をつくって、それを栄養としているものがいる。これを「暗黒の光合成」という。
 太陽光線による光合成のようなものが、暗黒の深海でやられているなんて、本当に驚いてしまいます。
 アフリカのフラミンゴはピンク色をしているが、本来の体色は白色。赤い藻を餌として食べているので、ピンク色になった。
バクテリアの仲間の「バチルス」は、2億5000万年前の岩塩のなかに見つかったものがあり、生きていた。
こうなると、生命とは何なのか、さっぱり分かりません。
重力は普通1G。ジェットコースターでかかる最高は5G。戦闘機のパイロットは、9Gにまで耐える訓練を受けている。ところが、大腸菌などは、40万Gの重力を受けても、平気だった。
南極大陸の氷の下に、ボストーク湖がある。ここには、これまで誰も見たことのないような遺伝子をもつ微生物がたくさん発見された。1500万年前の生物に、生きたまま会えたことになる。
人間の体内には、合計すると、1キログラムほどの腸内細菌が棲んでいる。種の数は1000以下。個体数にすると100兆個。それだけ多くの「別種の生物」が体内で人間と共生している。
本当に、生命体の不思議さは驚くばかりです。
(2013年12月刊。900円+税)

 KBCシネマでやっている映画「アクト・オブ・キリング」をみました。
1965年にインドネシアで起きた大虐殺事件「9.30事件」について、加害者が何をしたのか、自らの体験を喜々として再現していくというすさまじいドキュメンタリーです。どのように人を殺したのか実際にやってみせるのです。主人公は1000人もの人を殺したと高言するプレマンと呼ばれるギャングの親分です。
 今から45年以上も前のことですが、虐殺した側は、今もインドネシアの権力の側にいて、犯罪者どころか英雄視されてきました。ナチス・ドイツが戦争に勝って、その蛮行を自慢げに語っているようなものです。
 ところが、虐殺犯が自己の体験を再現してくなかで重大な転機を迎えるのです。次のような解説があります。
 「今も権力の座にあり、誰からも糾弾されたことがないため、今でも自分を正当化することができる。しかし、その正当化を本当は信じていないため、自慢話は大げさになり、より必死になる。人間性が欠けているからではなく、自分の行いが間違いだったと気づいているからのこと」
 前に紹介しました『民主化のパラドックス』(岩波新書)が参考になります。

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