弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年2月 8日

食の戦争

社会


著者  鈴木 宣弘 、 出版  文春新書

 食料の安さだけを追求することは、命を削ることと同じである。
 私も、まったく同感です。生活が苦しくなっているなか、なんでも安ければいいという考えが広まり、強くなっています。でも、食料を得るには大変な苦労がいります。安全かつ安心して食べられる食料を安定的に確保するのは国の最低限の責務でしょう。それを安倍政権は放り投げようとしています。TPP参加です。
 日本全国の郵便局でアフラックの保険を売り出すといいます。アメリカの民間保険会社に郵便局が乗っとられようとしています。郵政民営化とは、実は、アメリカ資本への市場開放だったのです。小泉純一郎に大勢の日本人がうまうまとだまされてしまいました。そして、今なお、だまされたことを自覚していない日本人が多数います。
中国の富裕層は、日本へ輸出している自分の国の野菜は食べず、日本から輸入した5~10倍の値段の日本の野菜を食べている。なぜか?
 安い粗悪な農薬が使われているから。
 日本の食は徹底してアメリカの戦略下に置かれ、変わるように仕向けられてきた。アメリカは、第二次世界大戦後、余剰小麦の援助輸出なども活用しながら日本の食生活をじわじわと変革していった。
 巧妙な食料戦略は功を奏し、いつしか、アメリカの小麦や飼料穀物、畜産物なしでは、日本の食生活が成り立たないような状況がつくられていった。食糧自給率が39%にまで低下しているのはその証である。
 日本政府は、国内の肉牛農業者や酪農業者には成長ホルモンの使用を禁じている。しかし、輸入については何の制限もしていない。
アメリカの企業であるモンサントは、1990年代半ば以降、次々と大手種子企業を買収し、現在では、世界のトウモロコシ種子市場の41%、大豆種子市場の25%、主な野菜市場の2~4割を占めている。
 モンサントは、遺伝子組換え(GM)作物の開発をすすめ、大豆で93%、トウモロコシで92%、綿花で71%、菜種で44%をGMが占めている。
 日本の農業は「過保護」ではない。日本の農業保護制度は、世界的にみて、かなり低い。日本農業は過保護だから高齢化したのではない。むしろ、関税も国内保護も削減し続けてきたために高齢化などの問題が生じた。
 TPPに参加して、この流れを加速させてしまったら、日本の農業は完全に崩壊してしまう。輸出で経営が成り立つ農家はいないし、考えられない。
 アメリカのスティグリッツ教授は来日したとき、次のように言った。
 「TPPはアメリカ企業の利益を守ろうとするもので、日米国民の利益にはならない。途上国の発展も妨げる」
 TPPとは、人口の1%ながらアメリカの富の40%を握る多国籍な巨大企業中心の、「1%の、1%による、1%のための」協定であり、大多数を不幸にするもの。
 たとえ99%の人々が損失をこうむっても「1%」の人々の富の増加によって統計としての富が増加すれば効率的だという、乱暴な論理である。
 安倍政権がすすめているTPP交渉参加は、「今だけ、金だけ、自分だけ」の典型です。
農産物を安く買いたたいてもうかったと思う企業や消費者は間違っている。それによって、国民の食料を生産してくれる産業が疲弊し、縮小してしまったら、結局、みんなが成り立たなくなる。
 本当にそのとおりです。私よりひとまわり若い著者の講演を聞いたことがありますが、本当に明快な話でした。TPP参加は阻止しなければいけないという熱意がひしひしと伝わって来る本です。ぜひ、ご一読ください。
(2013年8月刊。710円+税)

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