弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年9月23日

ぼくらの文章教室

社会

著者  高橋 源一郎 、 出版  朝日新聞出版

文章というのは、それを書いた人の「顔」ではないか、と思えてくる。
あえて、ここには紹介しませんが、この本の冒頭にある短い文章は、まさしく、その典型的な例証だと思います。
 アップルのスティーブ・ジョブズの話も紹介されています。私は『驚異のプレゼン』という本を読んで知っていましたが、なるほど、すごい文章です。ともかく、思わず身体がぐらぐらと揺さぶられるほど、心がうたれます。
 毎日毎日、何の変哲もない単調な作業の続く労働現場にも、見方をちょっと変えると、モノカキの大いなる題材がころがっている。要は、それをとらえる視点があるかないかの違いだ。なるほど、そうなんでしょうね・・・。
 人間は、苦痛のあまり、考えることをやめてしまうことがある。しかし、人間は考えることによって初めて人間になる。
 その場所、与えられた場所、そこで生きねばならぬ場所、いまいる場所、そこに住む自らの姿を見つめること、それが「素人」の考える、なのだ。そのために「素人」は「文章」を書く。遠くまで出かける必要はない。「文章」が書かれている場所はどこでもいい。
 いつか必ず文章がうまく書けるようになる方法はある。それは、文章を読むこと。それも、「ただ」読むのではない。優れた文章、誰もかけないような文章、一見ふつうだけれど、読めば読むほど、それがもっている強い力に引きずりこまれてしまうような文章、そのときには分からなくても、ずっとあとになって「あっ」と小さな叫び声をあげ、自分が一つステップを上がった気になってしまう文章などなど。それらを、自分の中に「しみ通らせる」ように読む。
できるだけ細かく、どのように書かれているのか分析し、解釈して読む。そして、それを限りなく繰り返す。
 私が10年以上も、こうやって他人の文章を書き写す作業をしているのも、文章作法の一つなんですよね・・・。モノカキ思考の私には、とても学べる、実践的な内容の文章教室でした。
(2013年4月刊。1600円+税)

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