弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年8月 6日

日本企業は何で食っていくのか

社会

著者  伊丹 敬之 、 出版  日経プレミアシリーズ新書

2011年、日本の産業に激変が起きた。世界に冠たる日本の産業だと思われていたエレクトロニクス産業で、パナソニック、ソニー、シャープの3社が信じがたいほどの巨額の赤字を出し、総崩れした。その原因はアメリカのリーマンショックでも、3.11東日本大震災でもなく、日本企業の競争力の崩壊にあった。
 2012年春に、このエレクトロニクス2社の赤字の合計は1兆6050億円。前例のない巨額の赤字だった。この3社だけでなく、日立製作所や日本電気なども、サムスンなどの韓国企業との競争に次々に敗れてきた。
 リーマンショックのインパクトは、震源地であるアメリカよりも、かえって日本に大きかった。いや、世界の主要国のなかで、日本がもっとも大きな打撃を受けた。リーマンショックのあと、日本の生産水準は絶不調だった。それでも円高になったのは、アメリカのドルも欧州のユーロも、リーマンショックのせいで弱い通貨になってしまったから。金融面では、そのショックの小さかった日本円に「避難通貨」として国際的なマネーが回ってきた。それだけのこと。
 2011年の日本政府債務残高は、GDPの2.3倍という巨大さである。あのギリシャはそれでもGDPの1.7倍でしかないので、日本の政府赤字がいかに巨大化が分かる。
 日本円は、数年間の大きな通貨上昇のあと、しばらく通貨下落が続くという、上昇下降の繰り返しを経験している。日本の企業は実によくがんばってきた。
 2000年から2011年までに、日本の輸出は14兆円ふえた。そのうち、中国向けの輸出増加額10兆円。全体の輸出増加分に占める割合は実に73%に達する。
 日本の輸出先として、中国がアメリカを抜いたのは2007年。わずかな差だった。しかし、翌2008年には、はっきりと中国がアメリカを抜いた。
 シニア向け産業は、日本企業が世界に先駆けて技術や商品の蓄積がある。アジア諸国の高齢化が急速にすすむなかで、日本企業が進出する余地がある。
 水も、漏水率でも水の清浄度でも、日本の水道はきわめて高い水準にある。コストを除けば、日本の社会インフラは世界一のレベルである。
21世紀に入って、日本から韓国への輸出は、増加の一途をたどり、その結果として、対韓国の日本の貿易黒字も増加してきた。2000年に1兆円だった対韓国黒字は、10年には3兆円弱にまで膨らんだ。
日本の古紙輸出の76%が中国向けで、量にして336万トン、中国の古紙輸入量の2割を占めている。
 2001年の日経現地法人の従業員数は全世界で320万人。2010年には、500万人となった。国として、もっとも増えたのは在中国の現地法人で、この10年間に66万人から160万人になっている。中国での日系企業の雇用は、11年で1000万人をこす。
この10年に、日経の現地法人は3300以上も増え、一つの国の日系法人の数は世界最大。また、売りあげも23兆円も増えて、中国国内向けの売り上げの増加をはかっている。
もはや、中国は日本企業の生産基地というより、市場として本格的に攻めるための事業基地だ。
 中国経済は、貿易や投資の総量の数字以上に日本の産業に大きく依存している。
 日本から中国への輸出は部品や素材であって、中国から日本への輸入は衣類が圧倒的に多い。中国は、日本から部品や素材を輸入し、それを加工、組立てしてアメリカやヨーロッパ、日本などに輸出している。
 日本が中国と「戦争」するなんて、ありえないのに一部の「タカ派」が不用意にあおりたてています。困ったことです。
(2013年6月刊。890円+税)

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