弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年6月23日

マリ近現代史

アフリカ

著者  内藤 陽介 、 出版  彩流社

マリ内戦にフランス軍が介入したとき、マリって、どこにあるの、どんな国なの・・・、と思いました。この本は、そんな疑問を絵葉書と切手をたっぷり載せて解明してくれます。
 フランスは17世紀、国王ルイ14世の時代にアフリカに進出し、西アフリカを拠点とした奴隷貿易を開始した。イギリスのリバプールやフランスのボルドーから積み出された銃器や繊維製品がアフリカにもたらされ、アフリカ諸国は奴隷と交換した。そして、ヨーロッパ商人は奴隷を西インド諸国やブラジルに売り渡し、タバコ、サトウ、綿花などをヨーロッパに持ち帰った。
 西アフリカは、今でも金や鉄鉱石などの鉱山資源が豊富にとれる。現在、マリはアフリカ大陸において、南アフリカ、ガーナに次ぐ第3位の金生産国となっている。金鉱山の総重量は4トンで、輸出先は、スイスとアラブ首長国連邦(ドバイ)が中心。そこには2万人の子どもが働いている。もちろん、学校へ通うこともない。
独立以降のマリの現代史は、旱魃や洪水、そして最近の北部紛争に至るまで、いずれも自分で解決できず、ひたすら政府と国民は諸外国の援助をあてにし続けた。
部族の対立、宗教の対立そして、汚職と権限濫用。アフリカ諸国の人々が平和に生きることは依然として難しいように思われます。でも、ここが安定しないことには地球上の戦争はきっとなくならないのだと思います。
 マリの過去および現在の状況をイメージをもって概観することのできる本でした。
(2013年3月刊。2500円+税)

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