弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年5月 3日

「中夏文明の誕生」

中国

著者  NHK取材班 、 出版  講談社

中国の最古の王朝を追求した面白い本です。
 司馬遷が編さんした最古の正史『史記』には、中国王朝は「夏」に始まり、「殷(商)」「周」と続くと記されている。「中華」という言葉の根源にある「夏」王朝なのである。ところが、この「夏」については、考古学の裏づけがなかった。それが、近年ぞくぞくと発掘されている。「殷」についても実在が疑われていたところ、遺跡から文字が出てきて、存在が確実視されるようになった。
 「夏」王朝は紀元前2000年頃に成立し、紀元前、1000年頃に滅亡し、次の王朝「殷」が誕生した。
 「殷」王朝は「商」とも呼ばれる。次の「周」は「殷」と呼んでいたが、「商」と自称していたと考えられる。
 「殷」は強大な軍事力を有していた。青銅器の強さと鋭利は、石器しかもたない勢力を圧倒した。さらに、「殷」は「戦車」という最新兵器をもっていた。エジプトの戦車はスポークが4本なのに、「殷」の戦車は最大で26本もあった。そして、車輪を大きくしたことから、車体も大きく作ることができ、御者に加えて戦士2人が乗り、戦闘力を飛躍的に高めた。
 今から3000年前、「牧野の戦い」で、最強の「殷」軍70万は、「周」の軍4万5000人によって壊滅させられた。「周」軍には8つの異民族が従っていた。
 「周」は異民族に青銅器を贈り、文字で「契約」を保証して、連帯関係を結んだ。
中国史のなかで「中夏」「中華」という世界観はたとえ夷狄の王朝であっても、すべての王朝で引き継がれたことは驚きだ。そして、それぞれの王朝が、それぞれの事情に応じて融通無碍に意味あいを変えていった。
 「夏」の王朝の実在すること、その実情について知ることができました。それにしても中国の広大な土地は掘れば掘るほど、文明の起源を知ることができるのですね。
(2012年5月刊。1800円+税)

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