弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年12月10日

人類の原点を求めて

人間

著者   ミシェル・ブリュネ 、 出版   原書房 

 古生物学者にとって、歯はこのうえなく貴重な宝である。歯は、骨の中でもっとも硬い部分であり、時間などの侵食に耐えられる可能性がきわめて高い。しかも、哺乳類の場合、歯さえ残っていれば、その個体を識別することができる。
 歯には、無数の手がかりが隠されている。たとえば、化石の哺乳類を特定したければ、たいていは、その第二大臼歯を見れば分かる。歯冠の形、咬合面の咬頭の数や形や位置、歯根の数や長さ、エナメル質の厚さを調べれば、種やその食性を判別することが可能である。
 それだけではなく、歯の位置や大きさや数、あごの形を見れば、その哺乳類の進化の程度が分かる。エナメル質の厚さ(ゴリラやチンパンジーは薄く、先史人類や現代人は厚い)や、その組織学的な構造、歯冠の形や高さ、咬合面の形を確認すれば、その動物の食性が把握できる。
 歯髄は生きている間にだんだん小さくなっていくため、歯髄の大きさから、その個体が死んだ年齢を推測することができる。歯のエナメル質の厚さは、明らかに食性と関係がある。生肉は意外に硬い。柔らかい食べ物も硬い食べ物も食べるためには、エナメル質は厚くなければならない。ゴリラやチンパンジーのように、熟した果物ややわらかい若葉しか食べないのなら、薄いエナメル質で十分だ。
人類の起源はアフリカにあります。砂漠のなかで、ヒトの化石を求めて大変な苦労をしている学者の様子がよく描かれている本です。そのおかげで、ヒトの歩みがかなり分かってきました。ありがたいことです。
(2012年7月刊。2200円+税)

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