弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年9月24日

ジュゴン

生き物

著者   池田 和子 、 出版    平凡社新書 

 見ていると、何かしら心がほのぼのと温まる、人魚のモデルになったジュゴンについての本です。
 ジュゴンは、イルカやクジラと同じ、海に棲み哺乳類。ところが、ジュゴンは、浅い海で草を食む唯一の草食性哺乳類だ。どおりで、牛に似たのんびりした雰囲気があるわけです。
 ジュゴンがいるのは、日本では沖縄周辺のみ。いま話題の辺野古(へのこ)海岸あたりを活動分野としている。
ジュゴンは、かつては食料として、また骨製品の素材として使われていた。
 イルカには体毛がないが、ジュゴンには全身に毛がある。ジュゴンの脳は、軽くて、のっぺりしている。ジュゴンの骨は組織が緻密で、堅く、重い。これは水中生活に適応したもので、海底に沈みやすくなっている。
 ジュゴンは、脱力すると、自然に体が沈み、海底に着地するようになっている。海底の海草を自然に食べられるように発達してきた。
 ジュゴンは、基本的に海藻は食べないし、消化できない。うひゃあ、これには驚きました。ジュゴンが食べられるのは海草であって、海藻ではない。ジュゴンは、食べたものを長い腸で長時間、微生物の働きを借りて消化し、陸上の植物と比較して栄養価の低い海草を最大限に利用している。
 何もなければジュゴンは50年以上も生きる。もっとも長寿のジュゴンは73歳だった。
現在、世界中のジュゴンは10万頭。東南アジアに100頭、インドに150頭いると推測されている。オーストラリアの7万7000頭が最多。
 ジュゴンについて簡単に知ることのできる貴重な新書です。
(2012年6月刊。840円+税)
 福岡で弁護士の不祥事が続いていますが、とても残念なことです。これらのケースは弁護士が大量に増えたことは関係ありません(少なくともほとんど関係ないと思います)。なぜなら、懲戒された弁護士は、弁護士生活30年、20年、10年といったベテラン弁護士だからです。個別にいろいろ理由はあるのでしょうが、そもそも弁護士に向いていなかったのではないかという感想をもつようになりました、
 弁護士は毎日毎日、他人のトラブルに首を突っ込んでいます。ほとんどのケースで、どちらかが一方的に悪くて、どちらかは一方的な被害者であり、善であるということはありません。そうでなくて、双方に大小の差はあっても言い分があります。そのなかで、社会的にも適正妥当な解決を見出していくよう努めます。そのとき肝心なのは、信頼者への説得です。弁護士の意見を押しつけるわけはいきませんが、依頼者に利害損失をよく理解してもらって、一緒に落としどころを探っていきます。このとき、人生観、価値判断がぶつかりあいます。そして、弁護士はそれに「勝ち抜く」ことが求められるのです。
 処分を受けた弁護士には、その点がとても弱かったような気がします。依頼者の「言いなり」になって、しかも、事件がまわらない、まわせない。これでは弁護士としてやっていけません。
 受けるべきではない事件は受任してはいけませんし、途中でそのことが分かったら、さっさと手を引く必要があります。
 弁護士が急激に増えている昨今は、文書作成能力はあるけれど、対人折衝が弱いという若手弁護士が増えている気がします。
 自分に向かない職業だと思ったら、さっさと転身を図る、また周囲がそれを勧めるのは相互の利益になるように思います。いかがでしょうか・・・。

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