弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年9月22日

超「集客力」革命

社会

著者   蓑  豊 、 出版   角川ワンテーマ21  

 以前に金沢21世紀美術館の館長、そして現在は神所のある兵庫県立美術館の館長をしている著者の人集めの話です。
 私は、幸いにして美術館めぐりも趣味の一つとしています。福岡市の美術館もたまに行きますし、東京・上野にある西洋美術館にもときに行ってみます。もちろん、フランスに行ったときには、昼は美術館めぐりを主としています。美術館に美味しいレストランや小じゃれたカフェがあると最高ですよね。
美術館の楽しみ方。できるだけ白紙の状態で行くこと。予備知識なしのほうが雑念が入らないから。すべての絵をまじまじと見なくてもいい。美術品は、「分かる」必要はない。大切なのは「感じる」こと。疑問をもつのは作品に近づくこと。
美術館で最大の愚問は、「この作品は誰の作品ですか?」という問いだ。
美術館は感性を磨く学校のようなものである。美術館の館長として、出勤してから朝一番にやることは、前日の入場者数が何人かを確認すること。美術館の民営化は失敗している。指定管理者制度によって美術館の魅力が向上したというようになってはいない。民営化は経費をカットするようなマイナス思考へ向かう。営利目的になりがちな指定管理者制度の導入には反対だ。民間がやればすべてがうまく行くというのは単なるイメージ先行にすぎない。
一つの展覧会で有料入場者数が5万人になれば、とんとんになる。
日本では学芸員をキュレーターと呼ぶが、それは本来の意味からはずれている。欧米でキュレーターと名乗れるのは、美術館の部長クラスのみ。キュレーターとは、部門のトップであり、展覧会の企画から予算管理までを任されるプロデューサーを指す。研究員はテクニシャンと呼ばれる。
館長は明るいほうがいい。さまざまな人をつないでいける人。もてなしの心をもつことも大切だ。館長が情熱をもたないと、お客はやって来ない。
オークションの手数料は25%。売る人からも買う人からも同じ率でもらう。高額な手数料にもかかわらず、オークションにかけたい人は引きも切らない。
子どものころに美術館に行ったことがあると、大人になってから100%近い確率で子どもを連れて美術館に行くようになるという統計がある。なーるほどですね。
私は残念ながら、ロンドンの大英博物館にはまだ行ったことがありません。それでも、フランスのルーブル美術館には2度行きましたし、ニューヨークのメトロポリタンの美術館にも行ったことがあります。そして、金沢の21世紀美術館にも行きました。今度、長野にある「ちひろ美術館」とか無言館にもぜひ行ってみたいと思っています。やっぱり美術館っていいですよね。
(2012年4月刊。781円+税)
 東京で映画を日本みました。イラン映画とドイツ映画です。日本の映画をみたくないというより、外国人の生活そして、ものの見方に関心がありますので、つとめて外国映画をみるようにしています。
 イラン映画は、イラン料理をイラン人女性が家庭でつくっていく情景を紹介したものです。とくにストーリーはなく、いくつかの家庭で料理が出来あがっていく様子が紹介されています。女性はスカーフをかぶっていますが、それが料理をつくるときに邪魔になっているのが気になりました。そして、紹介された家庭の二つが、撮影のあとで離婚したと最後に明かされて驚いてしまいました。イスラム教のイラン女性も男性に忍従しているわけではないのです。
 ドイツ映画は、ドイツの学校でサッカーを子どもたちに教えていくとき、苦難の状況をいかに乗り越えていったかというスポーツものでした、いつの世にも大人の偏見があり、貧富の差が厳然とあることが打破すべき壁として提起されていました。
 そして、テレビで山田洋次監督の最新作『東京物語』の撮影進行過程を紹介する番組を偶然みました。80人ほどの山田組が、ワンカットワンカットすごく丁寧につくっていることを知りました。役者のそばで山田監督が、そのときのセリフの意味をじっくり話してきかせるのです。うわあ、こんなに丁寧に教えるのかと感動してしまいました。81歳の山田監督を79歳のフィルム編集者が支えているのにも驚きます。ぜひみにいこうと思いました。

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