弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年5月22日

原発のコスト

社会

著者   大島 堅一 、 出版   岩波新書

 財界はいま総力をあげて原発再開を目ざしています。民主党政権はそれに抗することなく原発再開に動いています。そして、マスコミも大手新聞やテレビは原発の危険性など忘れたかのように、「電力不足」の不安を煽っています。でも福島第一原発のメルトダウンしか核燃料の処理はまだまったく手がついていないし、依然として大量の放射能が大気中そして海へ放出されているのですよ。そんなときに原発再稼働なんてとんでもないことじゃありませんか。
 これまで、原発は安くて安全だといわれてきました。この本は原発は決して安くはないこと、むしろほかのエネルギーに比べて、とてつもなく高いものだということをいろんな角度から論証しています。
 福島第一原発事故は、技術的な安全対策がとられていなかったことが原因と言われることがある。だが、それは原因構造の表面でしかない。なぜ安全対策が取られていなかったのか。それは、エネルギー政策形成にあたって、原発の真のコストが隠蔽され、利益集団の都合の良い判断のみが反映されてきたからである。このような仕組みがなくならない限り、また新たな問題が発生するであろう。
 福島第一原発事故の教訓を活かすためには、国民が強い政治的意思を形成しなければならない。
 脱原発は、政治的スローガンでもイデオロギーでもなく、現実に実行可能な政策である、脱原発に進むことは、保守や革新などの政治的立場、思想信条、社会的立場の別を超え、多くの国民が一致できる政策である。
 日本の原子力開発は、原子力複合体によって、反対派や慎重派を徹底的に排除して進められてきた。その最終的な帰結が福島第一原発事故である。原子力政策を推進してきた体制が完全に解体されなければ、原子力複合体は復活してくるだろう。
 原発事故は、最悪のケースで100兆円を超える規模の被害をもたらす可能性すらある。
 脱原発による便益は年平均2兆6400億円となる。脱原発の便益はコストを上回る。
 この本では、ローソンの新浪剛史社長が脱原発に反対を表明していると書かれています。なんということでしょう。がっかりどころではありません。コンビニと原発がどう結びついているのか分かりませんが、これだけみんなで心配しているのに、まさかローソンの「電力不足」のないようにするため原発が必要だというんじゃないでしょうね。すっかり見損なってしまいました。
(2011年12月刊。760円+税)

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