弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年3月26日

マジックにだまされるのはなぜか

人間

著者   熊田 孝恒 、 出版   化学同人

 手品にだまされて怒る人はいない。まことにそのとおりです。そのだまし方のうまさに驚嘆こそすれ、怒るなんて考えられません。でも、なぜ?
 だまされてお金を巻き上げられて弁護士のもとに駆けつけてくる人は後を絶ちません。騙しの手法は日々新しくなっています。一人でじっと家にこもっていると、うかうか騙されやすいのが現実です。
 人が、なぜだまされることを喜ぶのかという人間のメカニズムは、まだ十分に解明されていない。うへーっ、そうなんですか。奇術には私も楽しくだまされています。
 人間が本を読んでいるのを横から観察すると、眼は滑らかに動いているのではなく、ピクッピクッと、まるで秒針のように、不連続的に動いているのが分かる。実際には、眼は一度とまると、その前後の数文字を読み、それが終わると数文字先に飛び、そこで、またとまるというのを繰り返す。これをサッカード(サッケード)と呼ぶ。視線がとまっているあいだは、そのなかを注意のスポットライトが一文字ずつ字面を追って移動するということがおこなわれている。
 スムーズに眼が動いているように感じるのは、注意のスポットライトが、不連続な眼球の動きを補っているからだ。特徴検索モードとは、行動の目的にそった「構え」を維持し、その構えにしたがって情報を処理するようなメカニズムを働かせることにほかならない。私の速読術というのはひたすら自分の脳を信頼して活字を追うということです。理解できればどんどん読みすすめていくことができます。
 眼が動いた先でとまる直前の0.1~0.2秒ほどのあいだは、サッカード抑制によって眼からの情報が処理されない空白の時間が生じる。この空白の時間を脳はサッカードが終わった時点で得られた情報によって穴埋めしている。つまり、サッカード後の情報が、その0.1~0.2秒前から始まっていたかのように感じる。ヒトが眼を動かしているあいだに起きたことは認識されない。
 我々が見ていると思っている情報のうち少なくとも3割はリアルタイムではない。いわば静止画をプレイバックしているような状態なのである。
 日常生活では、我々は臨機応変に注意モードを切り替えながら、適切な情報処理を行っている。マジシャンは、わざと怪しげな仕草をすることで、観客の注意が特定の場所に向かないように「誤誘導」している。
 高齢者は自ら注意機能の低下を補うために、情報処理の方法を変化させていた。
 過去の知識を活用して目標に到達するという方略を採用した。考慮すべき情報が多くなると、無意識的な直感思考のほうがよい選択に結びつく。
 本を読むときの脳の動きや、見ることと認識のあいだのずれというものがとても新鮮な指摘でした。
(2012年1月刊。1700円+税)
 吹く風はまだ冷たいものの、すっかり春の日差しとなりました。白いコブシの花が満開です。同じく白のハクモクレンそして満開となった紫色のシモクレンを町なかに見かけます。私の家にもシモクレンがあるのですが、うちはまだまだ小さなツボミでしかありません。なぜか例年遅いのです。
 遅いと言えば、チューリップはようやく咲きはじめたもののまだ花を咲かせているのはわずか13本のみです。あとは、まだまだ春はまだ来ていないよという感じです。クロッカスやヒヤシンスもいくつか咲いています。今、見事なのは黄水仙です。これも自己愛を主張しているのでしょうか・・・。

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