弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年2月23日

コロンバイン銃乱射事件の真実

アメリカ

著者   デイヴ・カリン 、 出版   河出書房新社

 1999年4月20日、アメリカ・コロラド州の片田舎の高校で男子生徒2人が教師1人をふくむ13人を銃で殺害し、多数の負傷者を出した。犯人の生徒たちはその場で自殺した。
 マイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』は観ていました。これは、アメリカが銃社会であることが前提となって発生した事件です。
 この本を読んで何より驚いたのは、18歳の男子生徒2人が1年も前から大量殺人を計画し、爆発物と銃器を準備していたということです。ですから、まったく偶発的な事件ではありませんでした。そして、周囲の人のなかには2人の犯行予告に気がついて警察に通報して、警察もそれなりには動いたものの、あまり本気になって未然に防止しようとしなかったのでした。
 2人はインターネットに銃や爆発物の準備状況を書き込み誇示し、詳細な日記を残していました。それを分析した捜査官によると、一人は自殺願望があり、もう一人は完全な精神異常者、サイコパスだということです。
襲撃の1年前、2人は結構の時期と場所を決めた。1999年4月、学校のカフェテリアで。エリック(こちらがサイコパス)は1年かけて計画を練り上げ、武器を用意し、これは現実なのだと相棒のディラン(こちらは自殺願望をもつ)に納得させた。
 サイコパスは自分の偉業がなによりも楽しい。エリックは丸々1年間ものあいだ期待に胸ふくらませて計画を練ることを楽しんだ。支配することにこだわるエリックは、人の生命を思いどおりにできる日が待ちきれなかった。その日がようやく訪れたとき、エリックは図書室で好きなように時間をかけて、一瞬一瞬をかみしめるように味わった。あるときは気まぐれに生徒を殺し、あるときはやすやすと逃がした。
 ところが、日頃のエリックは、バイト先でも、奉仕活動をしている施設でも、相変わらず大人受けが良かった。そして、エリックは日記に本心を書いている。
 「アメリカが自由の国だと?これが自由だなんて、ふざけるな。・・・バカは撃たれて死ね」
 ディランはエリックの大量殺人に付きあう気はなかった。話だけは冗談まじりに楽しんでいたが、心のなかではひそかにエリックに別れを告げていた。
 ディランは、もうすぐ死ぬつもりだった。
エリックは日記に次のように書いた。
 「できるだけたくさん殺すことが目標だ。だから、哀れみや情けといった感情に流されるようなことがあってはならない」
 エリックは人をなんとも思っていなかった。自分は優れていて、それを証明したかった。人々が苦しむ姿を見るのを楽しみにしていた。できるだけ多くの人間を、できるだけ派手に殺すという目的は揺るがなかった。
 エリックが攻撃したのは、彼にとっては憂鬱でたまらないロボット工場であり、青春の象徴である学校だった。
エリックは、どんなとき真実が大人を喜ばせるか、誰に対してどこまで明かせばよいかを本能で知っていた。適切なふるまいを本能で知っていた。そして、適切なふるまいを演じ分けるのはエリックの最大の武器だった。
 エリックの成績は上がって、教師たちは非常に満足していた。他方、ディランの方は成績が低下する一方だった。
エリックもディランも両親がそろっていて、2人兄弟。静かな田舎町で不自由のない暮らしを送る白人の4人家族の次男。2人とも、自分より大きくて力の強い兄の陰で育った。
 エリックの父親は軍人で、転勤が多く、何回も引っ越した。空軍少佐だった。
 この事件は人質をとった立てこもり事件ではない。犯人の2人は、襲撃を始めた49分後、昼12時8分にそろって自殺した。
 2人は、実は大型爆弾を2つ高校内に持ち込んでいた。それが爆発すれば500人もの生命が奪われるところだった。しかし、2人の技術が未熟だったため、幸いにも爆発しなかった。だから、この事件は本当は銃乱射事件ではなく爆発事件というべきものだった。
 エリックには人をだますことが快感だった。エリックは神を信じていなかったが、神と自分を比べるのは好きだった。
 ディランの方は、非常に宗教心の強い若者だった。ディランは道徳、倫理、雷政というものを信じていて、肉体と魂は別物だということについてもよく日記に書いていた。肉体は無意味だが魂は不滅で、行き着く先は安らかな天国か地獄の責め苦のどちらかであると考えていた。
 サイコパスには2つの際立った特徴がある。一つは、他人に対して非常なまでに無関心なこと。ささいな個人的利益のために人をだましたり、傷つけたり殺したりする。二つ目は一つ目の特徴を隠す驚異的な才能だ。この偽装こそがサイコパスの危険なゆえんである。サイコパスは人を欺くことを誇りにし、そこにとてつもない喜びを見出す。楽しみで嘘をつくのは、サイコパスの核心であり、彼をサイコパスたらしめている特徴だ。
 サイコパスを生むのは、先天的なものと後天的なものがからみあっていると考えられている。サイコパスの基本は感じないということだ。サイコパスの治療は難しい。
 攻撃を始めて17分後、彼らは飽きてしまった。退屈しはじめていた。手柄を立てるのは楽しくても、人を殺すのに飽きてしまう。エリックは自分のしたことに満足し、得意になっていたが、すでに退屈しはじめていた。ディランは、躁鬱状態になって自分の行動にあまり関心がなくなる。ディランは死を覚悟してエリックに合わせ、そのリードに従ったのだろう。
 アメリカでは、コロンバイン以降の10年間に、80件以上もの学校における銃乱射事件が起きている。
 500頁をこす大作です。読みすすめるうちに背筋に何度も氷水が流れるのを感じました。本当にアメリカって怖い国です。若者が簡単に銃や爆発物を手にできるなんて間違っていますよね。もっとも、日本でも暴力団があちこちで銃を乱射する事件がよく起きています。そして残念なことに日本の警察は犯人を検挙できなくなっています。心配です。アメリカのような国に日本がなってしまわないことを心から願っています。
(2010年7月刊。2600円+税)

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