弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年1月23日

リスの生態学

生き物

著者   田村 典子 、 出版   東京大学出版会

 日本内外のリスを追いかけて、その生態を明らかにした面白い本です。
 リスって、公園で見かけると可愛いものですが、九州では残念なことにあまり見かけませんよね。
リスの祖先は3600万年前に地球上に出現した。
 リス科は、50属260種いる。リスの宝庫は意外なことに熱帯地域である。地上性リスの種は13属100種いて、全体の4割近くを占める。ムササビやモモンガもリス科に属する。
 リス科は、地上性、樹上性、滑空性の3タイプに分けられる。
 リスの門歯には歯根がなく、一生伸び続ける。だから、固い種子を毎日かじり続けて歯が摩耗してしまうことはない。むしろ、かじることによって門歯をとぎ、優れた切削道具として維持できる。
 リスの眼球は、魚眼レンズのように突出し、前方、後方、上方まで幅広い視野をもつ。
 枝から枝へ飛び移る樹上での移動において、瞬時に次に渡る枝までの距離を推定する必要がある。距離感を得るには、両面での立体視が必要である。
 リスは圧倒的に乱婚制である。メスが発情し交尾を受け入れる1日に、複数のオスたちが交尾のチャンスを狙って集まる、いわゆる交尾騒動が繰り広げられるのがリス類の配偶行動の特徴の一つである。
 リーダーオスがメスを独占するといっても、それは交尾の83%。次のオスが辛抱戦略をとるのが10%。さらには、盗み交尾も7%ある。交尾をすませたオスは、たいてい、それ以降の交尾騒動には参加せず、姿を消してしまう。秩序正しい乱婚である。この乱婚性について、その合理性が解明されています。子殺しの行動の可能性のある社会では父親隠蔽の必要性がある。自分が父親である可能性が少しでもあれば、子殺し行動は抑制される。メスは、多くのオスと交尾することによって、父親である可能性を担わせ、自分の子の生命の安全を期している。なーるほど、これってとても合理的なシステムですよね。
 リスの鳴き声にも意味があるようです。
 それにしても、リスの生態調査のために森の中に入っていき、毒ヘビを踏みつけそうになったという体験も紹介されていますが、怖いですよね。よく調査したものです。学者も大変ですね。
(2011年9月刊。3800円+税)

 日曜日にフランス語の口頭試験(準1級)を受けました。問題は2問あって、そのうち1問を選びます。3分前に渡されます。1問目は、3.11のあと海外からの旅行者が減っているが、どうしたらよいかというものでした。むむっ、原発の対応をきちんとやること、その成果を広報すべきだと一瞬考えたのですが、日本語つぃて本当にそれでよいのか不安だったうえに、修復というフランス語が思い浮かばなかったのでやめました。2問目は、政府は国民にすべてを告げるべきかというものでした。日本政府はすべてを国民に伝えていない現実をふまえて、軍事、外交、個人のプライバシーなど死活的に重要なことを除いて伝えるべきだと言いたかったのですが、なにしろ残念なことにフランス語が出てきません。3分間のプレゼンは、実際しどろもどろでした。そのあとフランス人の質問があり、マスコミとの関係で政府がコントロールしているとか、なんとか会話は成立しましたが、客観的には半分程度の成績だったでしょうね。今回は結果は厳しいことを覚悟しました。
 年に一度、最大限の緊張感を強いられる一日でした。

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